デート日和


何時もなら食事の準備とか掃除洗濯なんかであっという間に1日が終わってしまうけれど、
今日は少し趣が違う。化粧もしてお気に入りのワンピースを着てプレゼントしてもらった香水もして、
待ち合わせをした場所で愛しい旦那さまを待つ。

「え?デートですか?」
「ユカリちゃんともっと仲良くなりたい」
「あ、あの、この前の事まだ気にして」
「ええから。な?デートや。デート」

昨日の晩突然デートのお誘い。何でもギリギリまで粘ってやっと休みを勝ち取ったらしい。
あれはその場限りの言葉で気にしなくてもいいんですよと何度言ってもええんや、と返すだけ。
デートは嬉しいけれど、ちょっと申し訳ないような。それが朝になって。

「総司さん?」
「あー堪忍。ちょっとばかし会社行ってくるわ」

朝食を作っていたら総司に電話があって会社に行く用事が出来てしまったらしい。
今日はもうやめようと言ったら抱き寄せられてすぐに終わらせて行くからとキスされた。
こうして彼を待つのも嫌いじゃない。気分はあの頃の、といってもつい最近の記憶だけれど。恋人気分。

「ねえ彼女、何してるの?」
「人を待ってるんです」
「友達とかー?良かったらさ、来るまで遊ばない?」

それをブチ壊す見るからに遊んでそうな男。どうやらさっきから感じていた視線はこの男らしい。
何とか避けようとするが相手もしつこくついてくる。
下手にお洒落なんてしたからだろうかと何とか振り払おうとするのだが相手もしつこい。

「いえ、あの、夫を」
「またまたー。夫とかいう歳じゃないっしょ。女子大生?あ。もしかして女子高生?」
「いえ、あの、そこまで若くは」
「とにかく。行こうよ、ね。ここでたってても仕方ないし!決まり決まり!」

がしっ

「待てや坊主。何が決まりやねん」
「はあ?何だよおっさ………すいませんごめんなさい!!!」
「ざけとったら許さんぞコラァ!」

男の肩をキツく掴み百香里には出さないようなドスの効いた野太い声で威嚇する。間違いない総司だ。
やっと来てくれたと喜ぶ百香里だが。すぐに笑みがなくなる。現れた総司のファッションにちょっと引き気味。
何せ派手で柄のキツいシャツにストライプのスーツに極めつけがグラサン。

「えっと。あの、そ、総司…さん?……ですよ、ね???」
「ごめんなぁ〜真守が意地悪してきてさっきまでお仕事やってん」
「……そ、そうですか」

すぐに何時もの優しい声。でも見た目が朝と違いすぎる。こんな派手な衣装を着こなせるのは凄いけど。
如何せんハマりすぎというかゴツすぎる。男が勘違いして逃げたのも頷けるほど見た目が悪人。
これが総司的デートのコーディネートなんだろうか。いや。今まで何度もデートしたけどここまで凄くなかった。

「あれ。何か俺の事避けてる?もしかして遅かったん怒ってる?堪忍!」
「そ、そうじゃないです。お仕事ですし……」

何か香水もキツい。思わず一歩下がる。

「ゆ、ユカリちゃん……やっぱり…まだ」

百香里が自分を嫌っている。見た目の事よりもそっちが頭にあるらしくオロオロ。
どうやら気付いていないようだ。何時もと違う格好で戸惑っているだけということに。
どう説明しようか迷っていると仕舞いには肩を震わせて泣き始めた。

「泣かないでください、あの、……1つ、質問が」
「なに?何でも聞いて」
「何でそんな凄い、あの、凄すぎる、いえ、奇抜な……、うんと、何時もと違う格好してるんですか?」

言葉を選ぶのは大変。傷つけないように出来るだけソフトに聞いてみる。
何でそんな格好をしているのかと。デート仕様なんですか?とは流石にいえなかった。
どんな質問が飛んでくるかと構えていた総司だが、そんな事かとあっさり答える。

「あ。これ?その仕事が雑誌の取材やって。これそん時の衣装」
「…そ、そんな格好で取材を受けたんですか」
「何時もの格好でええ言うたのに相手が松前グループの若き社長にはもっとクールでカリスマな印象を〜
とか言うから。そら俺もまだまだ若いし男前やしとか思って……あ。……あかんかった?」

ここでやっと今日の格好が問題なんだと気付いた模様。申し訳なさそうに百香里を見る。

「いえ。素敵です」
「ほんまに?」
「ほんまほんま」
「それやったら、ええんやけど」

今日のワンピースちょっと派手すぎたかなとか思ってた自分が何か恥かしい。こんなの地味だ。
予定では付き合っていた頃よく行ったコースをめぐる。といってもそんな凄い所へ行くのではなくて、
すぐ目の前にある商店街を買い物がてら歩いたり途中でアイスを食べたり最終目的地は公園という質素なもの。
とても今さっきまで社長として取材を受けてきた人と行くルートではない。

「……」
「なあユカリちゃん。なんでそんな端っこ歩くん?」
「あ」
「調子…悪いんか?」
「いえ。総司さん」
「ん」
「手」
「うん」

もっと高級感ある場所を選ぶべきだったか。でも行き成り誘われてすぐには浮かばなかった。
だけどタイミング悪すぎた。なんて反省していると構ってもらえなくて不満げな総司。
気がついたら道の隅を下を向いて歩いていた。これはいけないと慌てて総司に寄り添い手を握る。
どんな格好をしていたって握る手は何時も通り大きくて暖かい。
香水がキツいけどすぐに慣れるだろう。格好にも慣れてきたし、商店街で買い物でも。

「あ。総司さん大変」
「んー」
「トイレットペーパー今なら222円ですって!222!」
「でも車ないし持って歩くんはなあ」
「あ。そっか。残念」
「帰りに見てこ」
「甘いです。激安商品は時間勝負なんですから」
「そ、そうなんや」
「やだ。…ごめんなさい」
「ええよ、ユカリちゃんのそういうところも好きやし」

謝る百香里のオデコに軽くキスして再び歩く。彼女らしい、と笑いながら。
百香里も222円のトイレットペーパーは惜しいけど大事なデートを無視してまで買いたくない。
でもまた今度こっそり来ようと誓う。あの店は自分のチェック外にあったから。要注意だ。

「総司さん見て」
「ん」
「可愛いですね。犬の赤ちゃん」
「ほんまやなぁ」
「いいなぁ」

ペットショップの前まできて愛らしい子犬に釘付けになる。動物は好きだけどそんな余裕なかった。
子犬は暖かそうに毛布に包まって兄弟らしき犬とくっ付いて眠っている。
時折見せる顔を掻く仕草や大きく口をあけてあくびなんかして。可愛くて仕方がない。

「べつにこうてもええけど」
「あの広いお部屋を掃除しては汚され引っ掻き回されると思うと。見てるだけなら可愛いんですけどね」
「ユカリちゃんは見ててもナニしててもめっさ可愛い」
「総司さんのすけべ」

何時までも見つめていたいけれど気がつくと総司の視線が犬から自分に移っているのに気付いて。
慌てて犬たちから視線を離す。意地悪っぽい目。百香里が犬ばかりみて構ってくれないからか。
でもって何処でも気軽にやらしいことを言ってくるから顔が赤い。

「ユカリちゃん休憩しよか」
「はい」
「アイス食べる?」
「頂きます」
「何時ものでええ?」
「はい」

ウロウロと店を見ながら歩いていたらあっという間に最終目的地である公園に到着。
真ん中に大きな池のある居たって平凡な公園。人気もまばらで特に何があるわけでもなく売店も1つだけ。
そこで売っているアイスをよく食べた。というか、食べるものがそれしか無い。

「はい。どーーぞ」
「ありがとうございます」
「食べよ」
「はい」

しばらくして総司が買って来たアイスを持って隣に座る。目の前には池。
特にムードがあるわけでもなく、ただここからなら人目につきにくいというだけで選んでいる。
疲れた体に甘いアイスが美味しい。百香里はバニラ。総司はみぞれ。

「そういえば。どんな取材だったんですか?やっぱり社長の」
「あれなー」
「はい」

ひと口食べた所で聞いてみる。昨日までそんな取材を受けるなんて話聞いてない。
朝もそんな事一言も。だから何となく気になって聞いてみた。
とはいえ、会社の事とか経営の事なんて難しい話なら聞いてもわからない。

「前からその話はきとったんやけど。そういうん面倒やし嫌いやねん、で。今日はユカリちゃんとデートやし
キッパリ断わってくれって言うたのに何の手違いかそれが伝わってへんで。
呼ばれて行ったら千陽ちゃんと真守にすぐ終わるから我慢せぇ言われてそのままホテルへ連れてかれて。
こんなんに着替えさせられて。まーしんどいしんどい」
「はあ」
「経営とかそんな真面目なもんやなくてただ有名な企業のボスが堅物のワンマン爺から有望な弟やなくて
何があったかふらふらしとった長男の馬鹿息子になったっちゅう話題性が欲しいだけや」
「ふらふら?」
「あ。親父の話しあんましてへんかったなぁ〜」

氷をシャキシャキと小さなスプーンで突きながらどこか冷めた様子の総司。
百香里も本当は義父になる人の事は知りたかったけれど、彼から積極的に言ってくれる事はなくて。
結婚する際も既に故人であった為にどんな人物で彼と息子たちとの仲なんてものは一切分からない。
ただ、ちゃんと話してくれないあたり良好とは思えなかった。それは3兄弟共通で言える。

「……」
「あのクソ親父、俺が中学出たら行き成り経営というものを骨の髄まで叩き込まれてこいとか抜かして
家からほっぽりだしよった。何が骨の髄じゃボケ。15そこらのガキに何ができる。毎日が地獄や。
何の支援もしてくれへんかったからな。とにかく腹減ったわ。
ほんで20になったら大学はいれーいうて呼び戻されて。今度は勉強漬けや。アホか。お前はアホか。
まあ。そんだけ俺に期待しとったんやろが、自分で言うのも何やけど。俺そういうの向いてへんし…」
「……総司さん」

ふて腐れた顔。苛々した顔。腹立たしい顔。百香里には決して見せない負の顔だ。
父親の話をしただけで彼の中で過去の出来事が思い起こされて。したくないのに自然と顔にでる。
百香里はただ静に隣で話を聞くしかない。

「何で俺1人こんなキツい思いせなあかんねん。っつー訳で、遅れて来た反抗期?家出や」
「家出」
「26か7くらいの時。結婚したんもそんくらいかな。まあ、何や言うてもあの親父には勝てへんくて。
怖かったんやろな。病気で寝たきりになって弱るまでは」
「……」
「自分でもアホしたなぁって思う。勝手に粋がって。そんなんで死に目に会えへんのは嫌なもんや。
どんだけ憎んどっても、やっぱり親は親やからな」
「……」

百香里には何も言う言葉が見つからなくてただ地面を見る。総司の靴と自分の靴。
両方とも綺麗。ちょっと前までは1つの靴を穴があくまで履いていた。
自分の過去もそういいものではない。総司に出会うまでは未来だってどうだったか。

「こんなん聞いてもおもろないやろ。それに、ユカリちゃんに嫌われるかもしれんって思ったらな」
「嫌いになる訳ないです」
「よかった」

お互い過去はあまり詮索しないできたけれど、こうして話してもらってやっぱり良かった。
一緒に生きていく人だから。百香里は全て受け止めると決めたから。笑顔で答える。
総司も百香里を失うことを恐れながらも自分の事をもっと知って欲しかったのかもしれない。

「アイスとけちゃいました」
「あー。堪忍!また新しいの」
「飲んじゃえば一緒です」

といってゴクゴク飲み干しごちそうさまでしたとまた微笑んだ。
総司は何処か安心した顔で百香里の唇を軽く奪う。めっさ甘いわ、と呟いて。
食べ終えたカップを捨ててまた歩き出す。コースは順調。


「ユカリちゃんとの思い出のブルーハワイにするかそれとも愛をはぐくんだオレンジペコにするか」
「総司さんたら……もう、早く決めちゃってください。はずかしい」
「ま、まってや。うーーーん。や、やっぱりブルハやな。綺麗やし、そうしよう。あ。でもペコもまた」
「……あなたっ」

最後の最後はラブホテル。左の道か右の道かで迷う総司。
ただでさえ歓楽街でホテルが乱立している区域。何時までも立ち止まって居たくは無い。
早く入ってしまいたい百香里はスーツを引っ張る。それが目当てなのか満足げに左の道を進む。
ちょっと意地悪な旦那さま。


「うちの風呂も全面ガラス張りにしたろか」
「それじゃ真守さんや渉さんが見えちゃうじゃないですか」

さっそくベッドへ連れて行こうとする総司だが百香里はそれを制してまずは風呂へ。
もちろん彼が嬉しそうについてくるのは想定内。仲良く一緒に風呂に入る。
部屋が見渡せるガラス張りの風呂に1人ワクワクしている総司。百香里はその隣で体を洗う。

「あー。そうやなぁ」
「私が見られちゃってもいいんですか」
「あかん。絶対あかん」

焦らず丁寧に体を洗い終え促されるままに彼の膝に座る。
すぐに抱きしめられ、首筋に舌がきてゆっくり上下に刺激していく。

「……ん」
「もう我慢できへん。いこ」
「はい」

ゆっくり風呂に浸かりたかったけれど、旦那さまはもう我慢できないようで。
そのまま抱きかかえられてベッドへ。
体が濡れているのを持ってきたタオルで簡単に拭いて乾かす。

「やっぱり何もしてへんのが一番可愛いな」
「総司さんも」
「俺のすっぽんぽん好き?もう毎晩みせたる〜」
「見てます」
「目に焼きつくくらい見せたる……」

百香里を寝かせると覆いかぶさる。まずは優しく頬にはりついた髪を払ってキス。
舌を絡ませて掻きまわして。百香里の手をしっかりと握る。

「…ん……ぁ…」
「俺は焼きついてんで、百香里の裸」
「ぁ……でも…ちゃんと…お仕事してくださいね」
「当たり前やん」

唇を離すと次は耳に首筋と丁寧に優しく、感じる箇所を的確になぞる。
くすぐったそうに足をモゾモゾさせる百香里。まだ手は握ったまま。
舌の優しい刺激だけで百香里の表情は既に歪み甘い声が出る。

「あっ」
「ん?まだおっぱい吸ってへんで?もう感じてるん?」
「……」
「可愛いなぁ。もう。意地悪したなるやん」
「意地悪、駄目です」

握っていた手がついに離れて百香里の胸をそっとなぞる。一番感じる部分はわざと触らない。
柔らかなラインを優しく軽やかになぞる指。それだけでゾクゾクしてきてそれだけで声が出た。
自分でも恥かしいくらい。そんな百香里の様子に満足げに微笑み胸を鷲づかんだ。

「堪忍やで」
「もう……」
「ああ、たまらん。めっさ柔らかい」
「あん…あ…ぁ」

揉みしだきながら指の合間から見えるピンクの愛らしい頂を強めに吸う。舌で転がす。甘噛みする。
総司の舌が動くたびにビクっと反応して体を震わせる百香里。声も絶え間なく出て頬が赤らむ。
恥かしくて百香里の手が胸にしゃぶりつく総司の頭に行くが既に引き離すだけの力はない。
そのまま彼を抱きしめる形で甘い刺激を甘受する。

「今日は色々迷惑かけたし嫌な事も聞いてもらったし、丁寧にいかせてもらうわ」
「あ、あの、なんで」

何故かずるずると総司の頭が下へさがっていって一番感じる部分へという所で総司が体を起こす。
てっきりソコを舌で愛撫するのかと思ったのだが。そうでもないようで。
不思議そうに様子を見ていると徐に百香里の両足を掴み彼女の頭の方へと押し上げる。

「全部見えて可愛いなぁ」
「あんっ」

最初は何をされたのか分からずただ苦しかった。けど、大きく開いた自分の股の間から見える
旦那のいやらしいニヤニヤした笑いが見えて。何となく察する。
こんな格好は嫌だ恥ずかしい、必死に足を動かして解除しようともがくけれどビクともしない。

「暴れたら余計見えるけどエエの?」
「……もう」
「何時までも熱々の夫婦でおるたにもこれからも腹割って話そな!ユカリちゃん!」
「それとこの恥かしい格好はどう繋がるんですか!」
「俺の股間を熱くしてくれるんは百香里だけや〜」
「あ。ちょっと……ああんっ!」

説得力あるような無いような。股を広げた恥かしいポーズのまま総司の舌の愛撫を受ける。
すぐにペチャペチャと水っぽい音。なにより目を開ければ自分のソコが舌で刺激されているのがよく見える。
それが何故か興奮してくる事にも気付く。百香里の視線に気付いて意地悪く見せ付けるように少し顔を引いて
ペロっと舌を出す総司。その舌先は生き物のようにうごめいて。太い指も意地悪く音を立てて暴れる。

「こ、このままですか?」
「奥のほーまで届いたほうがええやろ?」
「そ、そうですけど」

ちゅ、と頬にキスして総司が入ってくる。百香里の足は高らかに上げたままで。
苦しいけれど我慢できないほどではない。それを確認してから中へ入ってきた。

「百香里…入ってんで…見えるか」
「あ…あぁ…あなた…やめ…」
「恥かしい事ないやろ?ほら。ちゃんと見るまで全部いれへんで」

何時に無く意地悪な旦那さま。百香里が目を逸らす度に浅く突いては引っ込める。
散々愛撫されて受け入れる準備ができるのに、焦らされて気がおかしくなりそう。
言われるままに恥かしいけれどズブズブと総司のモノが自分の中へ入っていくのを見る。

「うっ…か、可愛すぎやで……」
「あっあっあっ……ぁああ…ああっ」
「奥まで…な」
「ああああ…っ…総司さん…」
「百香里っ」

こういう体位も悪くない。百香里も初めてで戸惑って入るようだが嫌いではないようだし。
行為の途中で足が地面につかないように途中から総司の肩に足を乗せられた。



「最悪」
「怖い」
「何ですかこれ」
「……うるさいなぁ」

デートの数日後。社長室の机には取材を受けた雑誌が置いてあった。
それに関しての感想を社長に呼ばれて聞かれた渉、真守、千陽の順番に言った。どれもよい評価は無い。
時間もないし仕方がないから行けと言ったのは真守と千陽なのに。何て酷いいいぐさだ。

「あの、差し出がましいようですが奥様には見せないほうが」
「何で?」
「堅気じゃないですよ」
「御堂さんそれはちょっと」
「あっはっは、言えてる言えてる」

そんなストレートな答えがあるか。しかも冗談めいている訳ではなく真顔。
彼女は秘書なのにこれはかなりの破壊力。真守は何とかフォローしようとするが渉は大うけ。
1人ゲラゲラと腹を抱えて笑っている。
何気に総司はカッコイイと思っていた。コーディネートした取材相手も褒めていた。なのに。

「渉はともかく千陽ちゃんに言われるとへこむわー……そうか、ユカリちゃん嫌やったんか」
「まさか兄さんそれで義姉さんに」
「デートした」

落ち込む総司の返事におもいっきり引いた顔をする2人。もういい、もう何も言わないでくれ。
無言という名の攻撃だ。傷口に塩を塗られながら雑誌を閉じる。

「ま、まあ、あれですよ。社長男前ですものね!」
「こ、こういうのも女性にはいいんじゃないかな。たまには何時もと違う装いも悪くないはず」
「ユカりんかわいそぉ」
「渉!」

その雑誌は未来永劫封印された。それらが目に付くことすら禁止されたようで。
社長が不機嫌になるのを考慮した秘書課の人々が常に目を光らせ苦労したらしい。



「ユカリちゃんは俺のすっぽんぽんがええんやよねー」
「服を着てくれない総司さんは嫌いです」
「えー」
「早くしないとまた千陽さんに怒られますよ。はい下着」
「はぁーい」
「……夜なら好き、です…」
「うん」

おわり


2008/12/15