相談

「専務。あの、専務?」
「…はい、何ですか」
「お加減が宜しくないのならお薬をお持ちしましょうか」
「大丈夫ですから。少し考え事を」
「そうでしたか。お邪魔して申し訳ございません」

秘書の声にやっと我にかえる。職場でぼーっとしてしまうなんて真守では珍しい。
社長は暇さえあれば妻や子どもの写真をみてのんびりボケっとしている。
その度に怒るのが専務の務めでもあったのだが。他の秘書たちが驚く中、
千陽はそんな彼女たちに気にしないように促して仕事に戻す。
彼女だけは専務がどうして考え込んでいるのか知っているから。

「今度の見合い回避できそうにねえんだろ」
「昼飯を奢れなんて言うから何かあるとは思ったが。やはりそれか」
「どうなんだよ。腹決めんのかよ」
「……」

昼休み。珍しく弟に呼び出され2人で会社を出て昼飯を食べる。
どういう風の吹き回しかと思って警戒していたが、やはりこれか。
真守は出されたお茶を飲みながら憂鬱そうな顔をする。

「別にあんたがどうなろうがどうでもいいんだけどさ。すげえ気にする奴が居るだろ」
「司か」
「あんたが家を出て、もし俺も出て行くことになったら。あいつ寂しがるんだろうな」
「しかし何時までも家に居るわけにはいかないだろう。お前は気にせず何時でも結婚したらいい」
「そんなあっさりきめられるのかあんた」
「時間の流れには逆らえない。何時までも留まっている事も出来ない」
「はっ。分かったような事言ってさ。そうやって自分納得させてるだけじゃねえの」
「珍しいな。お前が人の事にそこまで口を出すなんて」
「うるせえ」

それだけ気にしているという事か。せっかく築き上げられた家族が崩れていくことを。
かくいう自分もその話が来てからずっと悩んでいる。
先方は何時でも会いたいという。此方としても何時までも独りでいる訳にいかない。
会うだけの価値はきっとあるはず。そう思うのだがどうしても返事を出せないで居る。

「司に聞いてみようかな」
「は?」
「冗談だ。家を出るタイミングもちゃんと考えて出るよ」
「好きにしたらいいけどさ。泣かすのはお互いにナシにしようぜ」
「ああ」
「難しいだろうけどさ…」

食事を済ませ会社に戻る。まだ休み時間内。何時もなら椅子に座ってジッとしていられず
結局仕事をしているのだが今回は考え事がある所為か自分でコーヒーをいれて椅子に座る。
もういっそ話を受けて見合いをして結婚までしてしまおうか。司は寂しがるだろうが。
自分の年齢もある。そして何より何時までも兄夫婦と一緒というのも悪い気がして。

「専務。いらしてたんですか」
「僕に構わずまだ休んでいてください」
「コーヒーご自分で?」
「ええ。案外上手なんですよ。家でも淹れてますから」
「専務は器用だから」
「とんでもない」

のんびりしていると部屋に入ってくる千陽。渉と外へ出て行ったのは知っているから
まだ戻ってこないと思っていたらしい。彼が居るのを見て驚いた顔をする。
どうやら専務の居ない間に部屋を掃除しようとしていたらしい。手にはホウキ。

「お邪魔ですから私はこれで」
「御堂さん」
「はい」
「……、いえ。なんでもないです。すみません」
「失礼します」

だが掃除はせず部屋を出ていく。真守はそれを見送り。椅子に深く腰掛けてため息をした。
そんな時間さえ惜しいと思ってきた彼にしては珍しい行動。それだけ迷っているということか。
自覚しながらもその解決方法を見出せずに天上ばかり見つめてしまって。時間の無駄をした。

「そんな弄っちゃ駄目でしょう。やめなさい司」
「でもでも。バッタいたんだもん」
「バッタはまた今度。パパと公園行った時に捕まえなさい」
「パパがばっちいから虫さわっちゃだめっていうの」
「とにかく。せっかく綺麗に咲いてるんだから汚しちゃ駄目なの。いらっしゃい」
「はぁい」

司を迎えに来た百香里。何処にも娘が居なくて慌てたけれど、先生の誘導で
幼稚園裏にある花壇で1人何かしている司を発見して。よく見れば虫取り。
自分も幼い頃はしたから強くは出られないけれど。一先ず虫は解放させた。

「手を洗って」
「ねえママ」
「なに」
「今日はユズいないの」
「だってまだお仕事中だもの」
「…そっか」
「ママだけじゃ嫌?」
「そうじゃないけど。ユズが来るととくべつって感じがして楽しいな」
「また今度都合のいいときにお願いしてみるね」
「うん」

家に帰る途中でスーパーに寄って買い物をする。
司もおやつを買ってもらえるのでこの時間は好き。進んでお手伝いもする。
ここで頑張ったら頑張っただけ高いお菓子を買ってもらえるシステムだから。

「司のお友達?」
「うん。まいちゃん」
「そう。もっとお話ししてくる?」
「ううん。お腹すいたかえりたい」
「はいはい」

最近ハマっているチョコレートのお菓子はちょっと値段が高め。
なので張り切ってお手伝いをして今日も無事に買ってもらえた。
偶然お母さんとお買い物中の友達が居ても食べ物を優先して帰る。
簡単な挨拶は交わしていたからいいだろうと百香里も苦笑して。

「そうだ。ママ。まいちゃんお家を新しくつくったんだって」
「そう。凄いね」
「いいなぁ。司も新しいお家がいいな」
「そんなお金家に……あるか、…っと。…うん、家だって十分広いじゃない。綺麗だし」
「お家には広いお庭があってそこに犬がいるんだって。そこで遊ぶんだって!」
「お庭ならお爺ちゃんのお家があるでしょう?ブランコも滑り台だってあるもの」
「でも司の家じゃないもん。こわいおばちゃんいるし。犬もいないし」
「そうだけど。贅沢言わないの」

今住んでいるマンションは部屋が余るほどの申し分ない広さと綺麗さがある。
確か犬も飼えたはずだ。一軒家ではないけれどそうでなくても何ら不便ではない。
けれど司が不満なのは遊べるほどの庭がないのとそこに犬が居ない事。
実に子どもらしい欲求。

「庭があったら虫とりほうだいなのにな」
「司」
「はぁい」

でもそれをホイホイ叶えてしまうのはこの子の為にならないと思うから。
百香里は敢えてその夢を夢のままで終わらせようと思った。
出来るのにしてあげないのは子どもにとって悪い母親だろうか。

「司。おばあちゃんの所寄って行こうか」
「うん!寄る!にもの食べたい」

こんな時は母に聞いてみよう。百香里は方向を変えて母の元へ。
今の時間帯ならばパートから戻って部屋にいるだろう。夕飯の準備中か。
司は祖母のアパートへ来るのが好き。お菓子をもらったりおかずをもらったりする。
何より彼女にとって唯一いるおばあちゃんだから。

「あら。司。どうしたの?」
「おばあちゃんに会いにきたよー」
「忙しかった?」
「百香里。今ご飯の準備してたところ」
「んー。あ!あじふらい!」
「少し持っていく?」
「うん!」
「そんなに沢山無いでしょ?いいよ。勝手に押しかけたんだし」
「1人分には多いからいいの。司も食べたいわよね?」
「うん!食べたい!」
「司!」
「じゃあ準備するからテレビでも観てて」
「はーい」

機嫌よくテレビを観始める司。百香里は母の手伝い。
少しは遠慮しないと駄目でしょうと怒る百香里に笑う母。

「あんたにソックリだね。司は」
「そう?」
「そうだよ。まるであの頃に戻ったみたい」
「あんな食い意地はって無かったよ」
「よく言うわよ。お兄ちゃんのおかずいっつも取って食べてたくせに」
「そ、そうだっけ」
「そうでした。お兄ちゃんも百香里が可愛いから何も言わないでねぇ。お腹空いたろうに」
「……」
「それで。今度は何やらかしたの」
「こ、今度はって毎回やらかしてるみたいな言い方して」
「でも何かあったらすぐここに来るじゃないの。こっちだってヒヤヒヤするわ」

さすが母、すっかり行動パターンが読まれている。
百香里は観念して司の事について話してみた。

「与えられるならなんでも与えてあげる方がいいのかな」
「そうねえ。今なら何だって与えられるわね」
「でも。それって良いのかな。無いのが当たり前だったから。私そういうの分からなくて」

ちょっと欲しいと思ってもそれを母に言わないで心の中で我慢が当然。
欲しがるなんて感情も途中からは薄れていった。必要なものはおさがりでもいい。
見た目なんか気にしない。どう思われようが関係ない。それが自分なのだから。
そう思って来た百香里だが松前家に嫁いだ事で彼らに影響されていったのか
自分の考えを司にまで押し付けてもいいのだろうかと思うようにもなってきていて。

「松前さんだったら躊躇わず何でも買っちゃうものね」
「そうなの。最初は私に相談してくれなかったの!最近はしてくれるようになったけど」
「そんだけガミガミ言われたらね」
「だって」
「そんな気にする事でもないでしょう。今のまま自由に育てていけばいいじゃない。
何も買ってあげないわけじゃないんでしょう?母親が下手に悩んだり気にしだしたら
それはあの子にだって伝わるんだから。あんたが元気でいてあげないと」
「…うん」

母に言われて少しだけテンションが落ちる。司に心配をかけたろうか。
自分が揺らいでいる事があの子に悪い影響を与えてしまっていたらそれこそ最悪だ。

「犬つきの広い庭ね。中々壮大な夢じゃないの」
「友達が新築した家がそうだったみたいですっかり憧れちゃって」
「あんたらのマンションも豪邸だと思うんだけどね。いっそ一軒家に越したら?松前さんならそんなの簡単でしょ」
「簡単だけど簡単じゃないの」
「難しい子だねお前は」
「……自覚はあります」
「私が悪い面もあるけどね。ま、あんたはあんたらしくしてなさい」

反省する百香里に母は出来たてのおかずを持たせてくれた。
司は嬉しそうにニコニコして祖母に挨拶して部屋を出る。
短い滞在だったが百香里はきてよかったと思う。母は偉大だ。

「遅いから何かあったかと思ったぞ」
「すいません」
「ユズだ」

エントランスまで戻ってきたところでエレベーターから出てくる渉。何時になく真剣な顔をしていて
百香里たちの顔を見て安堵したようなちょっと怒ったような顔をしていた。事情を聞くと何時までも帰ってこない
2人を心配して探しに出ようとしたらしい。そういえば実家に寄ることを誰にも連絡してなかった。
母親の所に寄っていたのだと話して心配させたことを謝って一緒に部屋に戻る。

「次寄り道する時はメールな」
「はい」
「みてみて!あじふらい!おばあちゃんのあじふらい美味しいよ!だから…ママおこらないで」
「怒ってねえよ。それ美味そうだな、酒のつまみになりそうだ」
「司も食べる!」

気まずそうなママを察したのか司が何時も以上に明るく笑ってくれた。


「すみません。僕に付き合ってもらって」
「ええよ。たまには2人で飲もや」
「義姉さんや司には僕がちゃんと説明しますから」
「ユカリちゃんは家族の事になると俺よりアツくなるから。気にせんでええ」

百香里に電話して夕飯はいらないと伝えた。自分の分と弟の分。
寂しがるかと思ったがただ珍しいですねとだけ言っていた。
会社が終わって帰ろうとしたら真守に誘われた。こんな事は初めて。

「…家族、ですか」
「本人が思ってる分にはええやろ」
「いえ。僕も家族だと思ってますよ」
「そうか。ほんで。何処行く?俺何も考えてへんし男同士でええ雰囲気の店とか嫌やで」
「僕だってご免ですよ。適当に居酒屋でいいでしょう」
「ほな行こか」

冗談を言いながら車を走らせ目に付いた店に入る。騒がしいカウンターでは何だからと奥の座敷へ。
個室に2人。いい歳の兄弟なのだから気を使う事はないのだが案外言葉に詰まるもので。
座るなり黙々と言葉も無く料理を選んで行く。真守は運転手だからと酒は頼まなかった。

「…あの。兄さん。何か喋りませんか」
「分かってる。つか、お前なんかあるんちゃうんか?恋の相談ちゅう話しやったら
俺より渉にしたほうがええで。今は幸せな家庭もちやけどいっぺん失敗した男やし」
「貴方にも渉にも相談する気はないです」
「あそう。ほんだら何や」

テーブルには総司が頼んだビールと真守が頼んだ烏龍茶。
遠くでは宴会中なのか人の笑う声が聞こえてくる。忙しい居酒屋。
ビジネスの話をするには不向きだがどうもそうではない様子。

「結婚しようと思ってます」
「え。何時の間にそんな子おったんや?千陽ちゃんか?」
「違います。今度見合いをする女性です」

驚く総司。重大は発表なのに実にあっさりと言う真守。

「はあ?まだ本人とおうてへんのに早いやろ。写真だけでそんな気に入ったんか?」
「僕はこの先も誰かを好きになる事はないと思います。でも、それでは家庭は何時までも出来ない。
兄さんの家庭に何時までも僕が居る事は許されないと思うので。この辺で区切りをつけようと」
「待て待て。ほんなら好きでもない子と家に気兼ねして結婚するちゅうんか」

結婚や家庭という大事な問題なのにどこか他人事のような弟。
でも真面目な彼がそんな冗談をいう訳もなく。たぶん本気。

「このまま独り身で死ぬよりはいいでしょう。優しそうな女性でしたし」
「アホか。そんなんで幸せになれるわけないやろ。お前だけやない、相手の子もや。
何よりその間に生まれた子どもが可哀想やないか」
「子どもは愛せる自信があります」
「ドアホ」
「そうですか?」
「お前、そういう理由で結婚しますてユカリちゃんや司に言えるか?
言えへんからこうして俺だけに言うてんのやろ。結局逃げてるだけやないか」
「しかし」
「俺もユカリちゃんも司も誰も気にせえへん。お前が居っても何もかわらん幸せや。
確かに家庭もつんはええけどな。そんな無理やり作るもんやない」

偉そうに真守に言っているけれど、一度は失敗して家庭を捨てた。
そんな自分がこんな台詞を言うようになったなんて自分でも内心驚いた。
それだけ百香里との家庭で己の過去を顧みて学んだということなのか。

「兄さんならそう言うと思いました。たぶん、義姉さんに言っても同じ返事なんでしょうね」
「俺より熱弁するで。あの子はほんま家族大好きやからな。お前の事も本気で心配しよる」
「認識の甘さは自覚しています。なので、結婚するかは会って見て決めます。まずは会う事から始めないと」
「なあ。何で千陽ちゃんあかんの?若い子やないと嫌なんか?」
「彼女は僕には不釣合いですよ」
「そんな言い方せんでも。あれか。秘書やからか?」
「え?違いますよ。僕が、彼女に相応しくないんですよ」
「そうか?お似合いやと思うけどなあ」

派手さはなくても地味でもお互いを尊重し補助し合える関係。
ビジネスでもプライベートでも相性は悪くないと思うのに。
周囲の後押しもあるのにどういうわけか全く進まない関係。

「近くに居るからそう思うだけです。彼女は有能だ。自分の考えで臨機応変に秘書課を動かしている。
父の真似ばかりしているような僕とは違う。僕と居ると彼女の良さが失われるし、楽しくないでしょう」
「そんだけちゃんと千陽ちゃんの事見てるちゅう事は全くその気がないわけでもないんやな。
やってみやな分からんやろ。いっぺん誘ってみ。あの子もお前と同じ気持ちかもしれへんで」
「はあ」

イマイチ分からないのか曖昧な返事をする真守。

「秘書が専務に告白するちゅうのは大変やろ。そこは気ぃ効かせてお前から告白せんかい」
「それで断られたらお互い気まずいのでは?僕もちょっと恥かしい気がします」
「ンなもん笑ってごまかしたらええねん。お互い大人やしなんとかなるわ」
「なんとかなるって兄さんそんな大雑把な」
「とにかく。やっとお前がその気になったんや。結婚するんやったら自分がええと思う子や!」
「因みに兄さんは義姉さんのどの辺りに惹かれて?」
「え。な。なに。そんな恥かしい事言わすん?」
「兄さんの事例に当てはめてそれに1つでも僕の気持ちが重なればそれは僕がその人に気があるというとで」
「面倒な奴やな。男はあれや。ビビっと来るんや」
「ビビですか」
「そう。股間がビビっと来るんや。この子と子孫残したい!みたいな」
「そういう下品な話は渉としてください」

真守の冷ややかな視線の中注文した料理が来てテーブルは埋め尽くされる。
全て総司が適当に選んだものだ。こんなにも食べ切れるのか怪しいけれど。
適当に掻い摘みながらの会話はなんだか男子中学生のようなノリ。

「下品ちゃう。夫婦は体の相性も大事なんやで」
「そうですか。でも僕はそういう事には拘りません。仕事は忙しいし。出来ればあまり求めてこない人がいいです」
「冷めてんなぁ。でも、ちゃんとしたセックスしたら気持ちも変わるで」
「不愉快なので会話する気にもなりませんでしたが、僕は童貞ではありませんから」
「そんな兄ちゃんにまで嘘つかんでも」
「僕はそんな陳腐な見栄で嘘なんかつきませんよ」
「え……マジなん?つか、それでそれなん?」
「何を言ってるんですか」

だんだん本気で不愉快そうな顔になって来た真守。総司は心から驚いた顔をする。
女性経験ありなのにまるで無しみたいな弟。これも嘘なのかちょっと疑った。

「とにかく。千陽ちゃんに声かけてみたらええんや」
「もし、僕や渉が家から居なくなったら。司は寂しがりますよね」
「せやろな。お前等にほんま懐いてるし。傍に居るんが当たり前やと思ってるから」
「でも思春期に入ればそんな風にも思わなくなるんでしょうけどね」
「ずっと今のままでおってくれんかなぁ」
「無理ですね」
「司が彼氏連れて来たら発狂するわ」
「会社に支障の無い範囲でお願します」

ビジネス抜きでこんなにも長く真守と喋ったのは初めて。子どもの頃だって無かった。
彼から相談される事自体なかった。松前家の長男として勉強に追われていた総司に
弟の面倒を見るなんて余裕が無かったのもある。お互いに信頼も家族の情も無かった。
あれから何十年と経ってやっとこうして話せる様になったのは大きな進歩。感慨深い。


「おみやげありがとうございます。司喜んでます」
「ユカリちゃんも食べてきたらええよ」

家に帰ると司がお出迎え。土産を渡すと嬉しそうに百香里に見せに行った。
一緒に食べるより先に部屋着に着替えようと2人は各自部屋に入る。
総司が着替えていると百香里が入ってくる。

「何かあったんじゃないですか?真守さんが総司さんと食事するなんて珍しいから」
「ちょっとした恋バナっちゅう奴や。そんな心配する話やないよ」
「真守さんが恋バナ」
「せやねん。あいつ意外にヤリテなんやで」
「じゃあ私も今度相談しよう」
「ちょい待ち。何で旦那やなくて真守やの。ちゅうか人妻さんが恋の相談てなに?」
「恋の相談じゃないです。夫婦間の相談」
「そ、それこそ俺としたらええやんか。主にベッドで」
「そうなっちゃうから駄目なんです。それに冷静に第三者のほうがいい事もあるし」
「俺の何があかんの。あかん事だらけなんは自覚してるけど。直すから。せやから嫌やったら言うて」
「じゃあえっちの回数減らしていいですよね」
「それは難しい」
「……」

続く

2012/06/06