甘える


「だ〜れだ」

今日も忙しく掃除をしていた百香里。何せ今住んでいるマンションは幾つも部屋がある。
そこに突然手で目隠しされて。いきなりで驚いたけれどすぐに犯人は分かった。
まだお昼を過ぎたあたり。普段ならもちろん会社にいる時間だ。

「総司さん……」
「アタリや〜」

ため息をしつつ目隠しされたまま答える。一発で当ててくれたのがうれしかったのか
テンション高く総司はギュっと百香里を抱きしめ彼女の柔らかかな頬にキスする。

「アタリやじゃないです。お仕事はどうしたんですか」
「ああ、それは…まあ、後で」

普段は余程の事でもないかぎり怒らない百香里でもこればかりは許せなかったようでその手を弾く。
向かい合ってみればスーツ姿の総司。恐らく会社から秘書たちの目を盗んで帰ってきたのだろう。
愛妻の言葉にうろたえるものの、正直な所そんな表情さえも可愛いと思っている顔だ。

「そういってまた真守さんや千陽さんに迷惑かけて」
「だってユカリちゃんに会いたかってぇ〜ん」

総司は日本でも有数の大企業松前グループの長男。百香里はプロポーズされた時に初めて知った。
その上先代社長である父が亡くなって彼が遺言に沿って社長になったのはつい最近の事。
それまではのらりくらりと適当に暮らしていた人だから急に社長という大役は無理があったのかもしれない。
当然後継者として幼い頃から仕込まれているはずだから本来は有能でやれば出来る人なのだが。
百香里だってまだよくそこの所は分かっていない。自分が社長夫人だなんて。


「不真面目な人は嫌いになっちゃいますよ」
「真面目やで。俺はいっつも真面目君やで」
「どこがです?」

昼間っから仕事をほったらかして家に戻ってきて20歳も若い新妻を抱こうとする。
イヤイヤとまるで子どものように百香里に抱きついて離れない。惚れた弱みか強引には引き離せないし。
ここぞという所で強い味方の千陽も真守もここには居ない。だからこそ甘えているのだろうけど。
自分の所為で彼の信頼が無くなってしまうのはよくない。もっと強くならなければ。

「俺はいっつも真剣に、真面目に、百香里を愛しとる」
「もう…今はその話じゃなくって…」

心を鬼にして総司を会社へ戻すべく駄目なんです!と必死に自分を抱きしめる手を解除しようと押したり
引っ張ったり仕舞いにはペチペチと叩いてみる。もちろん痛くないように軽く気遣いながら。
そんな百香里の抵抗も虚しく総司の唇が頬やら耳やら首筋やら。

「そうやった。な、エッチしよ」
「その話でもないんですけど」

けれど、すっかりその気になっている総司に聞いてもらえるわけもなく。
困惑する百香里の唇にキスすると暖かなフローリングに寝かせてあれよあれよと服を脱がしていく。
もはやベッドに連れて行くだけの時間も勿体無いらしい。妻の抵抗などお構いなしで。

「やっぱりユカリちゃん可愛いなぁ」
「あ…んっ…だ…め…ですって」

最後の抵抗とばかりにジタバタする百香里。そんな妻を愛らしいと思いながら彼女が股を閉じられないように
スカートをめくり上げ足の間に座る。恥かしいのか頬を赤らめる彼女の手にキスしながらブラをあっさりと外した。
ここまでの動きの見事なこと。是非この手際のよさを仕事に生かして欲しいところ。

「心配なんよ…ユカリちゃん、1人で寂しないかなぁって」
「…電話…してください」
「ユカリちゃんだって俺にあいたいやろぉ?」

大人しくなった百香里を組み敷いて露になった胸を両手で荒く揉みしだく。
適度に大きく若いだけにツンと上を向いた張りのある綺麗な胸。夢中で吸い付いて舌でなぶる。
その度に耳元で百香里の甘い声。
総司に日々愛されて感じやすくなった百香里の喘ぐ姿を楽しそうに見つめる。

「んぁ…あ…ん…だからって…毎日…きちゃダメですって…」
「毎日心配で、仕事なんか手につかん…」
「あんっ…また…千陽さんに…怒られちゃいます…」
「そやなぁ…まあ、その分真守がなんとかすんやろ」
「…そういうの…ダメです…よ」

胸の頂を指で抓りつつ舌を絡めたキス。経験豊富でない百香里には刺激的すぎる。
こうなるともう快楽に飲まれてしまって抵抗できない。総司は分かってやってるだけに悔しい。
意地悪でねちっこい舌の動きに翻弄され足が攣りそうになるくらいに力が入る。
もっと気を抜いてとそれを手で撫でられて緊張を解されて。

「もー諦めなさい」
「あ…ぁああ」

足を撫でていた手が潤み始めたソコへ伸び気持ちの良い箇所を的確に刺激していく。
よほど余裕がなかったようでお互いに服を脱ぎきらないまま抱き合う。
明るい日の光が入る広いリビング。聞こえるのは卑猥な水音と荒い息と甘い声。

「百香里」
「あ…はぁっ…あなた…」

結局とんでもない所でエッチさせられてしまった。総司は少し休憩を入れてから会社に戻った。
今頃胃をキリキリさせながら書類を片付けている真守の姿が目に浮かぶようだ。
本来ならば厳しい態度で持って夫を送り返さなければいけないのに、申し訳ない気持ちでいっぱい。
つい甘やかしてしまう自分が悲しい。


夕方。やはり何時もより遅めに帰ってきた真守。数時間サボった社長の分も働いたのだろうか。
この家で唯一真面目に会社の為に働いている男。真面目すぎて面白くないと渉はいう。
とても疲れた様子だが百香里を気遣ってか総司への文句などは言ってこない。

「どうぞ」
「え?僕…何かしました?」
「毎日お疲れ様ですから。甘いもの大丈夫でしたよね」

夕食後、真守だけ自作のデザート。渉は羨ましそうに見ていたがこれは真守のモノなので。
また今度作りますね、と言ったらなんとか収まったようで大人しくなった。

「ユカリちゃんお風呂」
「ダメです。今日から甘やかさない事にしたんです」
「えぇ…お風呂…」
「ダメ」

そこに風呂の準備を持って登場の総司。何時もは百香里が準備するのに。
百香里と早く入りたいときはこうして自分で準備して誘ってくれる。
だけど甘やかしは厳禁。しわ寄せは全部真守にいってしまうのだから。

「わかった…1人ではいるわ」

何となく総司も察したのか、それとも百香里に嫌われると思ったのか。グズらずにいう事を聞いた。
でも何処か切なそうに、何度も百香里の顔を見ながら1人風呂場へ向かう総司。
そんな顔をされてしまうとつい一緒にはいろうと言ってしまいそうになる。でも堪えて。

「すみません、私がしっかりしてないから。真守さんにご迷惑ばかりかけてしまって…」

彼が居なくなってから何かあったのだろうかと不思議そうな顔をする真守に謝る。

「兄さんの事ですか?そんな落ち込まないでください。あれでもマシな方です」
「でも…」
「ちゃんと業務を果たしてますよ。昼間行き成り居なくなるのだって、朝のうちにほぼ終らせてるんです。
まあ、何の言伝もなく居なくなったり急な用事がある時は困りますが…。
何もかもを投げ出して貴方に会いに来るほど無責任な人じゃないから、…だから安心してください」
「はい。あ。でも、もし真守さんにご迷惑をかけたりしたら直ぐ言ってください。オヤツ抜きにしてやります」

もちろん、オヤツとはエッチの事だけど。いくら真守でも流石にそこまでハッキリとは言えない。
そんな百香里の言葉に苦笑して大丈夫ですよ、と返事をしてくれた。
真守はとても真面目だけどちゃんと相手を気遣えるとても優しい人だと百香里は思う。

「本当に義姉さんが来てくれて良かった。兄さんを引っ張ってもらえて、こっちは大助かりですよ」
「そんな…ふふっ」
「では、部屋に戻ります。デザート美味しかったです。ありがとうございました」

褒めてもらって何だか嬉しくて仕方ない。部屋に戻っていく真守を見送って。
視線を風呂場に向かわせる。やりすぎたろうか。総司も言ってくれたらいいのに。
何も言わないでいきなりくるのはよくないけど。でも、少し見直した。


「あ〜あ…ユカリちゃん居らな…おもろないなぁ…」
「私が居ても居なくても総司さんは長湯ですね」
「ユカリちゃん!」

クスリと微笑んで風呂場へ向かう。もう出てしまったかと思ったが覗くとまだ風呂の中。
ブツブツ文句を言っている総司だったが百香里の姿を見ていっきに笑顔になる。

「総司さんは甘えちゃダメですけど、…私、甘えたいです」
「エエよ…たっぷり甘やかしたる」
「体…洗ってください」

服を脱いで百香里も中へ。ハニカミながらイスに座ると総司が生き生きとした顔で風呂から上がる。
そのまま百香里の後ろに来て、スポンジにソープをつけ丁寧に洗う。
寂しかった、と耳元で囁き必要以上に百香里にくっついて。結局甘える旦那さまに甘やかす奥さま。

「…シャワーで流そうな」
「あ。お風呂のお湯でいいです…」
「エエの。こっちのほうが」

耳元で囁かれて百香里は顔を赤くする。
そんな中シャワーを持ってきて体中の泡を洗い流して。

「総司さんっ…」
「ほら、ココも洗わんと」
「…何だか…感じちゃいます…」

股を開かせるとそこへ温度を低めにしたシャワーが勢いよく出て刺激する。
意地悪な攻撃にピクンと体を震わせながら、総司の腕に絡んだ。

「シャワーで感じるん?」
「だって…」
「百香里は感じやすい子やもんね」

ようやくシャワーを止めて。再びギュッと後ろから抱きしめられる。

「こうするの…好きです」
「俺も。ユカリちゃんのお尻当たってるもん」
「すけべ」
「じゃ、こっち向いて」
「もー!ほんっとに!」
「僕すけべやもん」
「…もう」

総司に言われるまま、1つのイスに2人向かい合って座る。百香里には総司の、
総司には百香里の一番敏感な部分が触れて。百香里は感じる部分に当たるのか
少し動くたびに感じてしまう。舌を絡めあいながらの濃厚なキスをして。

「ほら、…甘えて〜や」
「じゃあ…寝てください」

広い風呂場には暖房が利いているので2人とも裸でも寒くない。
そのまま総司を寝転ばせて、百香里は恥かしいがお尻を彼の顔に向けた。

「お。69!?」
「…こういうの…好きですか?」
「ユカリちゃんとやったら何でも大好きや」
「私も。じゃあ」

既に反応しはじめて硬くなりだしたソレを手に取り、先っぽにキスする。
丁度同じ頃、総司も百香里のお尻を鷲?みして顔をくっ付けた。

チュ…チュク…チュゥ…

「ん…ユカリちゃん…焦らさんといて…いっつもみたいにしゃぶりついてや」
「だって…どれくらい大きくなるかやってみたくって」
「あ…っ…ホンマ…あかんって…」

手でも少しだけ扱いて、あとは先っぽをチロチロ舐めるだけ。
このじれったさがまた感じてしまって、総司はモジモジしている。

「総司さんの…」
「あっ…あ…ソコ…舐めたら…アカンよ…っ」
「ダメなんですか?」
「…敏感なんや…すぐイってまう…」

ガタガタと震えだして、百香里の腰を抱きしめる。
何だか何時もの総司らしくないので、百香里には面白くなってきた。
何時もは自分がヘロヘロになるまで攻撃されている所為かもしれない。

「じゃあ…何処ならいいですか?」
「何時もの場所っ…ユカリちゃん、何や今夜は…意地悪っ子やな…」
「酷い。甘えてるんです」
「…あっ…掴んだら…イってまうって」

クスクスと笑って、感じてる総司を見つめつつ。
そろそろかわいそうなので、確認を取る為総司に顔を向けた。

「旦那様。中でイキたい?それとも、口でイキたい?どっちがいい?」
「なか…」

思いっきり悪戯っ子の目で、甘い選択肢。
もちろん中を選ぶと分かっていたので、体はすでに総司と同じむき。
散々いじめられた腹いせとばかりに総司の動きは激しかった。

「こういうのもたまにはいいですね」
「お、俺…ヘトヘトやわ」
「肩もみましょうか」

それから、ようやく風呂場から出てきて。総司はもうヘロヘロでベッドに倒れこんだ。
百香里はまだ元気なようで。

「ユカリちゃんは中々のテクニシャンやね…」
「総司さんに色々教わりますから」
「ますます惚れ直しそうやわ…しんどいけど」
「お疲れ様です」

ちゅ、とおでこにキスをされて。そのまま抱きしめあって、眠ってしまった。



「だ〜れだ」
「…そ…総司さん…」

そして、また同じようにお昼の情事が始まる。

「意地悪されたからおかえしー」
「い、いやぁ!恥かしいですって!足を離してください!」
「何で?俺に見られて恥かしい場所なんかないやん」
「でも」
「んー。どうしたろっかなー…」
「あ…あぁ…総司さ…ん…じっくり見ないで…」

おわり


2008/11/29