新婚さん


「あー……やっぱユカリちゃんはええやなぁ」
「総司さんったら。誰と比べてるんですか?」

怒ったような口調で隣に寝る総司に尋ねる。
ベッドに入るなり甘えられて求められて、もちろんそれに応じ一息ついた所。

「ち、ちがうで!俺、付き合っとる時から誰ともしてへん!」
「…本当ですか?」

そういう意味じゃないんだと起き上がって慌てて百香里に言い訳をする。
旦那さまの困った顔を見たくてつい言ってしまった。多少気になったのも事実だけど。
百香里の手を握って必死の総司が何だか少しかわいそうになってきた。
姉さんは甘やかしすぎるとよく義理の弟たちに言われる。

「嘘ちゃう!俺が愛しとるんは、…ユカリだけや」
「嬉しい。総司さん大好き」
「当たり前やん、ユカリちゃ〜ん」

にこっと笑うと漸く総司も笑って、ついでに握っていた手を離し曝け出された胸に手を伸ばす。

「ん…あ…ああん…さっき…終わったばっかりですよ…」
「ええんやろ?…な」
「もう…」

さっき散々愛撫したのに。また百香里の上に乗って首筋に舌を這わせる。
恥ずかしそうにうつむきながらも、愛する夫の求愛に答える百香里。すぐに声が漏れる。
毎晩のように激しく求め合う新婚夫婦は、今夜も例外ではない。



翌朝。

「おはようございます」
「おはよ。朝っぱらからげんきそーだな……眠ぃ」
「そうですか?あ、渉さんは紅茶派でしたよね」
「そ。ストレートね」

珍しく真守よりも先に起きてきた渉。パジャマ姿のまま大きく伸びと欠伸。まだまだ眠そうだ。
義姉の前でもなんら気兼ね無しに椅子に座ると方向転換して後ろにあるテレビを見始めた。
台所では百香里が忙しく動いている。

「お前、義姉さんの前でよくそんな格好できるな」
「いいだろ。全裸で出てくるわけじゃあるまいし」
「おはようございます、真守さんはコーヒーでしたよね」
「おはようございます。ミルク、お願いします」
「はい」

暫くして今日もビシっと着替えて登場の真守。渉が先に居て驚いた様子だがとりあえず椅子に座る。
テレビを観てゲラゲラ笑う渉とは対照的に静かに経済新聞を読み出した。
兄弟なのにこうも朝のパターンが違うものなんだなと百香里は常々思う。顔は皆どことなく似てるのに。
以前夕飯の時に顔の事を話題にしたら揉めに揉めてそれ以来封印されている。似てるのが嫌みたいだ。

「ねぇ、あの人まだ起きてこねぇの?」
「みたいですね、起こしてきましょうか」
「別にいいけど、煩いのが居なくて」

でもって兄弟の仲は良くもなく、かといってそんな悪くも無く。むしろ空気みたい。悪い意味で。
最初の印象はそうだった。兄弟なのに誰にも干渉せず興味も持たず会話もせず。生活リズムが全部違う。
これでよく生活してたなと思えるくらいバラバラだった。総司は後から百香里とマンションに来たけど。
だけど最初は家族皆で暮らしていたはず。どんなものだったんだろう。少し気になる。

「はい。どうぞ」
「美味そ」
「ちゃんと嫌いなものははずしておきましたよ。でもバランスは取らなきゃダメですから全部食べてくださいね」
「すみません、何時も作ってもらって」
「料理好きなんです。こっちが付き合ってもらってるようなもんだし」

プレートに料理を綺麗に配置してスープもつけて渉と真守の前に置く。
何時もなら総司を待つ百香里だがお腹がすいてしまって2人のテーブルに混ぜてもらう。
百香里のモットーはみんなで楽しく味わおう、なので。もちろん総司が居たほうが嬉しいけれど。

「あのさ、今週でかいパーティあるじゃん?その時間俺デートなんだけど。パスできねぇかな」
「デート…、まあ、別にお前はまだ肩書きがあるわけじゃないからな。兄さんには僕が言っておこう」
「どぉも。なあ、ユカりんは行くのか」
「と、とんでもないです!私そんな所いけません!緊張しちゃう」
「渉、いい加減そのユカりんはやめたらどうだ。義理とはいえ姉さんに対して…」
「いいんです、その方が。だって、私姉さんって感じじゃないし」

三男の渉でさえ27歳。結果百香里はこの家で一番若く20歳。今年成人式を迎えた。
ここに来てまだ1ヶ月も経っていない新参者。年上に囲まれて笑顔ではいるが正直まだ違和感は残る。
何より姉さんはむず痒い。真面目な真守は頑なに姉さんと呼ぶけれど。

「そうだろ。ユカりんが家に居るんなら飯の心配はいらないか」
「そんな悲しい事言わんといてや」

振り返ると、こちらもパジャマ姿の総司。

「総司さん…」
「ユカリちゃんが行かへんのやったら俺もいかんで」
「兄さんが行かないんじゃどうにもならないじゃないか」
「いやや。会場はでっかい船やで?しかもいっぺんのったら次の日まで降りれん奴やし。
ユカリちゃん無しで1日も生きてられん……ぜったい行かへんからな」
「ガキじゃあるまいし、…40オヤジの言う事かよ?」

とにかく総司をテーブルに座らせて朝食の準備をする。彼はコーヒーでも紅茶でもなくフルーツジュース。
さっき作っておいたものをコップに入れて渡す。

「義姉さん、頼めないかな?今回のパーティはうちとしてもぜひ参加して情報交換したい所なんだ」
「ユカリちゃ〜ん」
「わ、私なんか行ってもいいんでしょうか…お話しとかついていけないし。マナーも分からないし」
「気にすんなって。あんなもん、綺麗な服着て笑ってりゃどーにでもなるよ」
「…わ、わかりました。行きます」

元来、頼まれると断れない性質。真面目な弟と、愛する夫に強請られてはNOとは言えない。
だけど自分は社長夫人として立派に役目を果たせるだろうか。不安で仕方ない。
大丈夫だからと笑顔で言ってくれる2人には申し訳ないが全く安心できない。本音は行きたくない。

「あ〜あ。飯食いあぐねちまったな」

唯一不参加の渉。何か作っておきますね、と言ったら頼むと返事をした。
甘えるなと真守は怒ったけれど渉は聞こえないフリ。総司はそれよりも百香里に甘える。
食べさせてと言われて、はいどうぞと新婚の甘い時間。それもあっという間に終わって、
皆さまそれぞれ会社に行った。行くのは嫌だという総司は真守に睨まれながら。
百香里は主婦なので皆を笑顔で見送るのが朝の日課になっている。



プルルル…

『あ。ユカリちゃ〜ん』
「どうしたんですか?何か忘れ物ですか?」
『そうやないねん、…声聞きたなってな…』
「総司さんたら。お仕事中じゃないですか」

4人が余裕で住めるほどの広い超のつく高級マンション。
百香里が来る前は家政婦さんを雇っていたようだったが今では彼女1人で掃除をしている。
他にも料理、裁縫など家事が大好きなので全く苦ではない。やりがいすら感じているほどだ。
でも、大抵昼前には総司から電話がかかってくる。今日もこうして。

『怒らんといて…わかってんねんけど、…つい』
「怒ってないです。…嬉しいです、…総司さん」
『ほ、ほんま!?…よかった』
「大好きです。…頑張ってる総司さん、最高に素敵だから」
『ユカリちゃんが居るから頑張るんやで。ホンマ…むっちゃ好きや〜』
「帰ったら…いっぱい可愛がってくださいね」
『任せとき!…ほな、夕方な』
「はい」

プツン、と電話が切れる。
もう少し話をしていたいと思う気持ちもあったが、それでは仕事にならない。
何せ、寂しい声を出しただけで仕事放り出して帰ってくるような人なので。嬉しいけど、だめだ。
帰ってくるのを待ちわびながら掃除機を取り出す。


「奥様」
「え?千陽さん?」
「社長来てない?って聞こうと思ったんですけど」
「居ないんですか?」

誰も居ないはずなのに階段を上がってくる音がして、誰かと思えば秘書の千陽だ。
彼女は社長秘書なので鍵を預かっている。朝会社へ行きたがらない総司を引っ張ったり
会社を抜け出して百香里の元へ来たりする総司を引っ張るのによく来る。
逃げられないようにインターフォンを鳴らさない時もあるので百香里も気にならない。

「わかった。また専務室ね」
「大変ですね、秘書も」
「特にあの社長は。元は有能な方なんだからやる気さえ出してもらえたら…」
「そ、そんなにやる気ないですか?」

今回も百香里の元へ逃げたと思ってこっそりと入ってきたようだ。残念ながら総司は居ないけれど。

「無い。全くと言っていいほど無いです。残念ながら。殆ど専務がやってるようなもんだし。…お可愛そうに。
口を開けばユカリちゃ〜ん…愛妻家なのは認めますが、それを社内でやられますとね」
「すいません、ちゃんと言っておきます」
「では会社に戻ります。あと、専務少し熱っぽいみたい。何か体にいい…温かいもの作ってあげてください」
「はい」

まだ文句がありそうな千陽を見送り。途中だった掃除を再開させて気がつけばお昼時。

「う〜ん。残り物は無いなぁ…よし。月に一度の贅沢!」

道具を片付けて今日もやったぞと伸びをする。お腹もすいた。
冷蔵庫のものを使い切るまで極力新しいものは買わない。ある材料で工夫して来た。
もちろん、夫やその兄弟たちはそのことを知らない。と思う。あまり知られたくないから。
出来るだけ冷蔵庫は百香里が仕切っている。ビール専用の部分だけ渉がよくあける。
だけど月に1度だけ外食をする。自分へのご褒美、というのも変だけど。これが楽しみ。
着替えて財布のお金を確認して戸締りをしてからマンションを出た。

「ユカりん?」
「あ。渉さん」
「買い物?」
「いえあの、お昼…を」

といっても豪華なお店に行くわけでもなく、定食屋だったりこじゃれたカフェだったり。
今日は何処にしようかと街をぶらぶら歩いていたら渉と出くわす。
皆には内緒にしていた月に1度の贅沢。これは不味い所を見られたと恥かしくなる。

「俺も。一緒にどう?」
「それじゃ、今から行く店へ行きませんか?美味しいですよ」
「いいよ」

怒る様子も笑う様子もなくただ普通に一緒に食べようと誘われた。
それならと百香里が店に案内する。安くて美味いランチのお店。
以前雑誌で調べて何度か来た事があった。

「あ。…渉さん、こういう店嫌いでしたか?」
「いや。こういうのは初めてなもんで…何時もここへ?」
「まさか!月に1度だけです」

渉の言葉に慌てて1回だけですから、と強く言う。百香里という女性は渉には少々理解しがたい。
お金には困っていないはずなのに。あの兄の事だからこの人に対して金を惜しむはずが無い。
本来ならば小遣いも使い放題だろう。なのにどうして?服も質素だし化粧っけも無い。しなくても美人だが。
何をそんなに気にする事があるのだろう、不思議な女。

「美味い」
「でしょ!内緒ですけど、ここのレシピを何とか盗めないかと画策している所なんです」
「俺にはユカりんの料理のほうが美味いと思うけど」
「そうですか?研究しがいがありますね」
「はぁ」

突然、ため息の渉。何か悪い事でも言ったのかと、不安げな百香里。

「な、何か悪いこと言いました?」
「あ?別に、…さて。会社に戻るかな」
「渉さん?」
「俺が払う、女に金払わす主義じゃないんで」

サッと机の上の請求書を奪うと颯爽と会計を済ませお先に、と言って出て行った。
あまりの速さに何も出来なかった百香里はぽかんとその後姿を見ていた。

「ど、どうしよう…おごってもらっちゃった…」

人におごってもらう事になれていないから、妙に緊張してしまう。だけど相手は渉。
何も気にする事じゃない、ないよね?ないない。1人勝手な問答をしながら店を出る。
今日はツイてるいい日、なのか?

「あら。ユカリじゃない」
「あ。玲美」
「せっかく会えたんだし、その辺の喫茶店でも行かない?」
「いいね」

昼に使おうと思っていたお金。おごってもらったの余った金で買い物でもと思っていたのだが。
またまた偶然にも高校時代の友人とであった。

「アンタさ、金持ちの御曹司と結婚したんだって?」
「御曹司…なのかなぁ?」

浮かんだのは総司の顔。どちらかというと渉とか真守の方がそれっぽいかも。
なんて彼女の淡い想像を壊すのもなんなのでそういうことにしておこう。

「超カッコいいんでしょ?いいわよね〜」
「うん」

そこは即答する。カッコいいのは事実だ。三兄弟はタイプは違うけど紛れも無く美形ぞろい。
寄ってくる女性も数多でそのたびに百香里は総司を奪われないかと怖くなる。
今のところ大丈夫だけど。いや、これからだって注意しておかないと。気が引き締まる思い。

「あんな旦那、そうそういないわ」
「あんな?」
「さっき一緒に歩いてたじゃない」
「…え?」

どうりで御曹司なわけだ。彼女は渉を旦那だと思い込んでいるようで。
目がウットリしている。

「私にもいい人紹介してよ〜」
「そんなに知らないってば」
「そっかぁ」

それから、高校時代の話なんかで盛り上がり。だけどそろそろ帰らないと洗濯を取り込まないといけないし、
夕飯にも間に合わなくなるので、友人と別れ。急いでスーパーへ駆け込んだ。
量も4人分。百香里の腕の見せ所である夕飯は手が込んでいるだけに準備に時間がかかる。



「ユカリちゃ〜ん!帰ったで!」
「きゃ」

そろそろ夕飯も出来上がるという頃に騒がしい声と足音。来るなり百香里を抱きしめて、頬をすりすり。
先に帰ってきていた渉はイラっとした顔をしてテレビに集中する。

「会いたかった〜」
「お帰りなさい、手を洗ってきてくださいな」
「はぁい」

おでこにちゅ、とキスされて。テレながらも少し遅れ気味に食事の準備に取り掛かるが、
彼らは酒を飲むので時間稼ぎが出来る。
最後に真守が帰ってきて、昼間千陽が言っていた言葉が気になってあれこれと真守に構う。
それが総司には気に入らなかったようで拗ねてしまって。食後もムスっとして。
弟たちは気を利かせてか各自部屋に戻った。2人きりのリビング。

「お風呂はいりましょ?」
「…このままはアカンの?」
「ダメ」

ソファに座る総司の隣に片付けを終えた百香里が座って。いい感じになってそのまま服を脱がせて…、
そこでストップ。渋々2人用意を持って風呂場へ。広い風呂場に、広い更衣室。すべてが高級だ。
どっかのホテルに来たみたい、今でも思う。

「ゆ、ユカリちゃん…」
「…ん…ん」

総司の服を先に脱がせると、まだ元気の無い垂れ下がる熱いモノを口に銜えた。
そのまま、舌でチロチロと舐めはじめる。

「ええよ…めっちゃ…」
「…総司さん…んぅ…ん…」

百香里の愛撫で、あっという間に硬さと大きさを持ったソレを、愛しそうに手でも扱きはじめる。
ビクンビクンと体を震わせながら、クッと総司の顔が快楽に歪む。

「ユカリちゃん…う…っ…ユ…百香里っ!」

数分後、口の中に苦いものが広がる。
それを飲み干し、少しフラフラしている総司に抱きつく。

「…総司さんは今の所健康ですね」
「奥さんの健康管理がええからな」

キスして、風呂へ。

「あ!シャンプー切れかけてます!」
「そんな驚く事やないやん」
「しまったー!このシャンプーの詰め替え用パック、今日特売日だったんですぅ」
「そ、そうなん…」

ほぼ空のシャンプーを片手に、しまった!とウルウル泣きそうな百香里。
結局、ボトルに水を入れて薄めて使うことでその場は切り抜けた。ちょっとビックリな総司。
百香里の事は分かっているつもりだったけれど、まだまだおくがふかそうだ。そこも愛らしいけど。

「総司さん」
「ん。なんや?」
「ダメじゃないですか。千陽さん、家まで来てましたよ」
「…だって。ユカリちゃんの声聞きたかってん」
「今度からは、ちゃんと千陽さんに断わってから電話ください。そうじゃなきゃ1日エッチ抜きですからね」
「そ、それは嫌や!…わかった。…了解を得てから電話します」

百香里が総司の体を拭いてやって、パジャマも着せて部屋へ戻る。
今度は百香里に怒られて、しょぼんとしてしまった。

「総司さん、…エッチしないんですか?」
「ユカリちゃん…もう怒ってへん?」

まるで子どものように、百香里のご機嫌を伺うように尋ねる。それが無性に可愛く思えてしまって、
抱きしめてキスする。そのまま、深いキスになってお互い脱がせていく。
それから少しの間をおいて。

「あ…ああっ…っ……ぁっ」

抑えた声で、百香里の絶頂の声が響いた。

「…ホンマ、イキやすい子やね」
「だって…」
「ええんよ。…ユカリは感じやすいねん、そこも可愛い」

中に挿入してすぐ、百香里はイってしまう。もちろん総司はまだイケてなくて、結局1人で扱いてイク。
百香里は一度絶頂してしまうと中々復活しないから。

「ダメな奥さんですよね…」
「な、何言うてんの!そんな事いわんといて」
「でも…数えるくらいしか、満足させてあげてないです」
「そんな事ない。毎回満足してんで、…ホンマに」

ギュウっと抱きしめて、耳元で甘く囁く。安心したのか、抱き返してきて。
それを合図に再び夜中まで絡み合った。



数日後。

「ど、どうしよう…怖いです」
「そんな、大丈夫ですよ」
「…どこも変じゃないですか?おかしくないですか?」
「貴方は何時もどおり、どこもおかしくなんかない。ドレス、よく似合ってます。とても…綺麗ですよ」

百香里の気遣いのお陰か週末にはすっかり元気になった真守。
そして、今日は豪華客船にて立食パーティの日でもあった。なれないドレスに戸惑いつつも、
先に入った総司の後を追う。隣には迎えに来てくれた真守。彼に隠れるように豪華な船に乗り込む。
本当に、自分はここに居ていいのか。不安でたまらない。

「む、無理です…会場とか皆さん豪華で明るくて…まぶしい」
「貴方も十分まぶしいですよ、……何て、似合いませんね」
「嬉しいです。…あ。総司さんだ」

歩きかけて、止まる。総司が楽しそうに喋っていたのがごつい体した外人だったので。
今行けば、挨拶程度の会話を求められる。それは無理。英語は中学生レベル…以下。

「僕が行ってきますよ、姉さんは何か食べているといい」
「すいません」

固まった百香里を見て、真守が出る。その間美味しそうな料理を頂こうとまじまじと見つめていた。
とっても美味しそう。きっと有名なシェフとかが集まって作ったのだろう。
これはもう食べるしかない。今度マネするとかそういう次元ではなくてお腹一杯食べたい。

「お嬢さん、お1人ですか」
「え」
「何処かのご令嬢とお見受けしましたが、…お名前を教えていただけませんか」
「そ、そんな。私違います」

いきなり言い寄ってきた男から何とか逃れようとする。相手はビシっとスーツを着こなす見るからに金持ち。
対する百香里は緊張して足がもつれる。こんな時に限ってきびきび出来ない自分が嫌。
とはいえ、着飾った20歳の美しい娘が居れば当然令嬢だと思うだろう、まさか人妻とは思わない。

「では、どこかの財閥のお孫さん?」
「えっと…あの…」
「まあいい、…お嬢さん、一緒にダンスでもいかがでしょう。それとも部屋でお話しでも…」
「俺の嫁に何か用事でもあるんか?」

どうしていいか分からず、ただオロオロしていた百香里。
仕舞いには男に腕を掴まれてしまって、泣きそうになる。そこへ、ようやく百香里をみつけた総司が到着して。
男をにらみつけた。

「え」
「自己紹介が遅れました。私は松前グループ社長の松前総司と申します。で、こっちは妻の百香里です」
「は、はじめまして…」
「そ、そうでしたか。貴方が…あの」
「それで。妻に何か?」

先ほどまでの商業スマイルとは打って変わって、笑顔の裏に怒りの形相。男はすごすごと離れていった。

「総司さぁん…怖かった」
「アカンで、変なのが多いんや。ユカリちゃんは特に可愛いんやから、もう、…心配させんといてな」
「はい」
「もぉ〜めっちゃ可愛い!」

見つめ合って、2人だけの世界へワープ。しばらく視線だけでラブラブして。

「兄さん、ちょっといいですか」
「おう。真守、ユカリちゃんを見といて。危なっかしくてかなわんわ」
「わかった」
「すぐ戻るから、待っといてや」
「はい」

さすが世界に名だたる会社なだけあって、こういったパーティでは引っ張りダコ。
忙しく動き回る総司を見て、惚れ直す百香里。

「姉さん?」
「真守さん、今度これ作ってみようと思うんですけど…」
「はあ」
「多分レシピは私の想像通りだと思うんです、けど、…皆さんどういう味が好きかなっておもって」
「僕は甘い方が。兄さんは姉さんの作るものなら何でも美味いだろうし。渉は特に好き嫌いはないです」

真守がふと下を見ると、百香里がなにやらノート片手に食べ物を吟味していた。
不思議そうに見つめていると、ものすごい真剣な顔で。

「じゃあ、真守さんの好みでいいね…メモメモ」
「姉さんは研究熱心だな、…兄さんも少しは見習ってほしいよ」
「私は今のままでいいと思うけどな。少々頼りなくっても、真守さんや渉さんがいるし。
兄弟って、喧嘩しても補えるよさってあるじゃないですか」
「…やっぱり、貴方は姉さんだな…」
「え?」
「いえ。こちらも美味しそうです、如何です」

無邪気にデザートをほお張る百香里。ため息をついて、真守も食事を一口。
パーティ会場で食事なんて何年ぶりだろう何時もはあいさつ回りで酒ばかり飲んでいるから。
でも、美味しそうに食べる百香里を見ていたら自分もお腹がすいてしまった。


「あ〜疲れたわ」
「何か飲み物作りましょうか」
「ええよ、…ユカリちゃんがおれば」
「でも…総司さん…お酒いっぱい飲んでたし…」

船の中にあるとは思えない豪華な客室。
戻るなり疲れたようにソファに座りこみ、そのまま問答無用で抱きしめられて暫く休んでから。
ゆっくりベッドへ倒される。どうやら疲れているくせにこれから妻とやる気らしい。

「ええやん…ずっと我慢しとったんやで?」
「私も、寂しかった」
「今夜は寝かさんで…」

下着を脱がせて、ドレスの肩紐をずらし唇を這わせる。
それだけでビクンと震えて、総司をキツク抱きしめる。

「あん…」
「ユカリちゃんはホンマ感じやすいな…」
「ん…ああぁ…総司さん…っ」

百香里を横向きにさせて、露になった胸を激しく揉みしだく。
それだけでなみだ目になって身悶える百香里に、総司もそそられる。

「オッパイでこんなんや、…コッチ行ったらどうなるんかな」

耳元でエッチな事を囁かれて、心臓がドキドキしてしまう。
総司の指が、パンツの上からソコをなぞる。

「いや…意地悪…しないでください」
「直に触って欲しい?」
「…はい」
「じゃあ、俺の手持って、触って欲しい場所もってってや」

酒が入っているからか、今夜の総司は少し意地悪だ。けれど、すでに体が火照っている百香里は
言われるまま腕を掴みすでに水気を帯びた下着の中に導いた。

「…あ」
「自分で動かしてみ、…どんな動きが好きやの?」
「恥ずかしいです…」
「俺とユカリの間に、恥ずかしい事らないやろ」

言いくるめるように熱いキスをされて。仕方なく、腕を掴んで動かし始めた。
総司の長い指が少しずつ中に入ってきて、触れられる事を望み大きくなっていた蕾に触れた。

「…あん…あああ…ん」
「そういう動きが好きなんや…」
「…総司…さぁん…」
「イキそうなんやな?」

コクン、と頷いて。総司を見上げた。
それでようやく動いてもらえると思ったのだが、今度は四つんばいにされて。

「あの…?」
「行くで」

後ろからなどは初めてだったので、正直怖いという気持ちがあって。
けれど、総司に抱きしめられて拒否はしなかった。

「ひゃあんっ」
「…くっ…こっちも…ええ…で…」
「総司さんっ…」

お尻の肉を掻き分けて、中へ。初めての感覚に、百香里の腰がわななく。
それをしっかり押さえ込み、腰を動かす。

「はあはあ…っ…ユカリ…ユカリっ」
「あん…気持ちいいですっ…総司さんっ!あああん…っ」
「アカン…俺…もう…イキそうや…っつ」
「ま、待ってくださいっ…もう少し…」

お尻に挟まれて何時も以上に刺激させるのか、すでに総司は体が限界近くなってきて。
しかし、百香里はまだもう少し。そこで、総司の指が百香里の蕾を優しく撫でる。

「くっ…キツいわ…っ」
「あ…ああ…イキます…もう…」
「ええよ…一緒に…イクで」

ぴったりと体がくっついて、耳元で総司の声が響く。
次の瞬間には2人同時に果てた。

「…一緒に…イケました…」
「そやな…めっちゃ良かったで。疲れたやろ、寝よか」
「…お休みなさい…」
「おやすみ」

ちゅ、と可愛らしいキスをして2人汗だくのまま抱き合って目を閉じた。


つづく


2008/10/18