新スタート


「千陽さん。どうしましょうか」
「どうしましょうって言われても。私じゃどうしようも…」
「だって。このままじゃ…大変なことに」
「そうだけど。まあ、なんていうの?これも宿命っていうものじゃないかしら」
「宿命ですか?宿命…」

ため息をする奥様は今日里帰りしていた実家から帰ってきた。
疲労している訳ではないのだがその表情は困った顔。
なにかと大変だろうと手伝いに来ていた秘書も同じように困惑した顔。
2人の視線の先にはリビングで、そこには小さなベビーベッドがあって。

「だけど、無事に出産を終えられてなによりでした」
「女の子ですけど」
「一姫二太郎、ですよ。奥様」
「そう、ですね」

愛する娘がそのベッドに寝かされている。

「にしてもあのデレデレ具合。会社でもあんな調子で困ってるんですよね。
社長は毎度の事だったけど、まさか専務まで…赤ん坊の力って凄いわ」
「ごめんなさい。ちゃんと総司さんには話をしたんですけど」
「会社としては困るけど、あんな可愛い顔をみせられちゃ仕方ないか」

眠る赤ん坊を囲む男たち。あまりベタベタと触らないほうがいいだろうとじっと見つめているのだが
それが結構怖かったりする。百香里と千陽はリビングに戻りお茶の準備をするが彼らは気づかない。

「そ、そんな触ったらせっかく寝ているのに起きてしまうでしょう」
「どうせすぐにぐずって泣きよる。そろそろ腹へってくる頃や」

勉強をしながらもやはり本番は違うようで慌てる真守。対して余裕があるのか手際の良い総司。
案の定泣き出した娘を抱っこして後ろに居る百香里に渡した。すぐさま授乳の準備。
胸を出したら真守は慌てて視線を逸らす。千陽はお茶を出す。
総司は妻と娘の様子を隣で嬉しそうに見つめ幸せそう。

「あの。総司さん」
「なに?」
「噂で聞いたんですけど。この子の為にご実家を改築してるって本当ですか」
「ほんまや」
「……」

いたって爽やかな笑顔で言う総司に百香里は絶句。そんな相談は受けなかった。
自分の実家に帰っていたのもあるが。総司の事だからもしかしたらこっそりやって
完成したのを見せて驚かせようとしたのかもしれない。

「あれ。もしかしてユカリちゃん引いてる?」
「引きますよ。なんでそんな事しちゃうんですか」

どちらにしろ百香里からしたらそれは結構なショック。

「えー。なんで怒るん?あの家は子どもが遊ぶもんがなんもない。部屋も渋すぎやから可愛く」
「甘やかさないでください。子どもはご飯と親が居れば育ちます」
「そ、そんな怒らんでも。相談せんかったんは悪かった。けど」
「やってしまったのはしょうがないです。次からは相談してください」
「わかった。…堪忍」
「実家の子ども部屋はもう作っちゃったんですか」
「まだ」
「なら…私もレイアウトみたいです。女の子らしくって、可愛い感じで」
「うん」

総司は嬉しそうに百香里の頬にキスする。下ではまだ母親のお乳を飲む娘。
久しぶりに家族が揃う日。今日は豪勢に行こうと買い物も済ませてある。
いつの間にか気を利かせ真守と千陽は席をはずした。

「お母さんがまた総司さんと3人で来て下さいって。あ、そうそう。司見てすぐに総司さんに似てるって」
「そうなんか…俺にはあんまり似んでほしい」
「どうしてですか?その、…何か気になる事でも」
「ユカリちゃんみたいに可愛い子になってほしいから」
「総司さんに似てて可愛くないですか?本当は男の子がいいなって思ってました。けど、
やっぱりこうして抱きしめてると関係ない。私と総司さんの子ども。すごく幸せ」
「俺も幸せや。ユカリちゃん、お帰り」

見詰め合って総司の顔が近づく。百香里は目を閉じる。
久しぶりのキスが出来るその瞬間。

「あいたっ…もう。こら。司いきなり噛まないでビックリするでしょ」
「おお。元気やな。ユカリちゃんに似たんかな」
「私乳首齧ったりしませんから」

激痛まではいかないが不意打ちで齧られて痛いでしょと引き離す。

「わからんでぇ?はよ飯ださんかい!とか乳の出が悪いで!とか」
「か……噛んだかもしれない」
「えっ冗談なんやけど」

お腹がいっぱいになったのではないようで。反対の胸に移動し授乳。
こちらも気に入った様子でまた黙々と飲み始めた。

「今までは私が1番年下で皆さんに助けてもらってばっかりだったけど、今はこの子がいる。
しっかりしなきゃ駄目だってお母さんも言ってました。守ってあげなきゃいけないって」
「無理して気張らんでええから。今までどおりにおればええ。それでええ」
「総司さんが居ますからね。真守さんも渉さんも居るし、安心できます」

決意を新たに娘を見つめている百香里の頭を撫でオデコにキスする。もうすぐ21歳になる百香里。
結婚から1年経とうとしているけれど、それでもまだ彼女が若いことにかわりはない。助けが必要な時は
今まで以上に増えるだろう。素直に助けてと手をあげられる子ではないからそれが少し心配だけど。

「頼ってくれてええから。1人で抱えたらあかんよ」
「はい。…あ。飲み終わったみたい」
「司、終わったらからて母ちゃんのおっぱいベシベシ叩くのやめや。なんやおっさんみたいやで」
「ずっとこうなんです。何か意味あるんですかね」
「わからん。満足そうにしとるから”美味かったで母ちゃん!”て言うてるんかな」
「なるほど」
「さ。暫くまたねんねせぇや」

百香里から司を受け取るとベッドに寝かせる。
満腹になりすっかりご機嫌な彼女はあっという間に寝てしまった。
お腹がすいたりオムツの取替えなんかの時がくるまでは静か。
戻ってきた総司は百香里の隣に座り彼女の肩を抱き寄せる。

「千陽さんに聞きました。またお祝いのパーティとか開いてくださるんですよね」
「あったなぁそんなん。最初だけ顔出してもろて後はこっちでやっとくから」
「それで大丈夫でしょうか」
「ええよ。あんなんビジネストークか上辺のしょーもない話ししかせえへんから。
そんなんユカリちゃんにも司にも聞かせたない。…それより、やけど。さ」
「な、なんですか」

妙に体をくっつけてくる総司。顔もこころなしかニヤニヤしている。

「今夜あたり…その、あれや。久しぶりにやな」
「え。めんどくさいです」
「そ、そうなん。わかった…」

まさかの拒否に総司は視線をそらし小さくなっていじける。
確かに朝でも夜でも関係無しに泣いて母親を呼ぶ娘がいるから。
疲れているだろうし夜だってちゃんと出来ないかもしれないし。でもめんどくさいって。
その理由はやっぱり寂しいというか悲しいというか。ブツブツとそんな文句を漏らす。

「冗談ですって」
「冗談にしてはめっさ顔が本気やったような気がするんやけど」
「ちょっとめんどくさい。けど、総司さんとちゃんとえっちできるの久しぶりだから」
「無理には」
「あそうですか。じゃあ寝ます。普通に」
「い、意地悪やなあ。Sっけ満載やなぁ。俺を苛めて楽しいんか?俺泣くで。この歳でも泣くで」

いい歳をして百香里に抱きついて泣くマネをする総司。そんな夫の頭を撫で。
ごめんなさいと謝った上で彼の頬にキスをした。それを合図に総司の手が百香里を抱きしめ。
戻ってきた妻を確かめるようにギュッとくっ付いて甘えてくる。こんなスキンシップは久しぶり。
子育てに一杯一杯で忘れていたもっと彼に触れていたいと思う気持ちが甦る。

「あれ。総司さん香水かえました?」
「ん?いや。変えてへんけど」
「…そっか。これだったっけ。総司さんの匂い忘れちゃったのかな」

ギュウっと総司に抱きついて匂いを嗅いでみる。香水の香と彼の匂い。

「思い出してくれた?」
「はい。あの。私ちょっとお乳とオムツ臭がしますね…着替えてきます」
「ええよ。そんなん気にしてたらきりないで」
「…はい」

また司が泣き出すまで百香里はじっと何をするわけでもないが総司にくっついていた。
手を握って肩を寄せて。思い出したように夫婦の時間。暫くして席をはずしていた真守と千陽が戻り
司を彼らにあやしてもらいながら夕飯の準備などしながら時間はすぎて。

「それじゃ百香里さん。何かあったらいつでも連絡をください」
「はい。…あの、総司さんにはちゃんとしてくださいって話をしますから。だから」
「ありがとう。でも、暫くは様子を見ることにします。そこまで私も鬼じゃありませんから」
「すみません」

食事を終えて千陽が帰る。明日からまた大変な日々に戻る。
百香里が1人で司とマンションに居るからよけいに気になって仕事に身が入らないであろう上司2人。
何時もなら優秀なストッパーである真守が今回はすっかり総司側についてしまっているから多難だ。
百香里は出来るだけ説得を試みようと思っている。だが千陽が思っているように恐らくは無理だろう。
玄関からリビングに戻ると真守に抱っこされてあやされる司。

「こうですか」
「もっと優しく」
「はい」

何時も以上に真面目な社長による専務への指導。こんなの会社では絶対に見られない。
百香里はソファに座って暫く兄弟のやりとりを眺めていた。総司はやはり手馴れている。
真守くらいのオドオド感じが恐らくは赤ん坊を授かった新米のパパの姿だと思う。

「どっちが父親かわかんねーな」
「渉さん。お帰りなさい」
「そっちもお帰り。これ、土産」
「ありがとうございます」

何時の間に帰って来ていたのか後ろに立っていた渉。振り返り挨拶。
すぐに彼は小さな箱に入った土産をくれた。恐らくはケーキ。

「ほら、司だぞ渉。お前も抱っこしないか」
「いいよ。子どもなんて煩いだけだろ」
「寝るときとか煩かったら言ってくださいね。部屋沢山ありますしそっちに移動します」
「何言ってんだそんな事して司が風邪とかひいたらどうすんだよ。赤ん坊ってのは風邪でも大変だろ」
「…はあ」
「だから、空気清浄機とか加湿器とか買ってきた」
「へ?」

チラっと渉の後ろを見ると巨大な箱が2つ。もしかして空気清浄機?加湿器?
渉は冷静に見てくれていると思っていたのに。もしかして彼も結構気にしてくれているのか。
総司だったら何かしら声をかけたいところだが相手が真守や渉になると言い出しにくくて。
しかしながらこのままでは司の為に様々なものが部屋に運び込まれそうで怖い。

「なんや。お姉ちゃんとデートとちごたんか?」
「梨香と一緒に行った。あいつこういうの詳しそうだったから」
「そうなんか。今度御礼せんならんなぁ」
「そ、総司さん…」

突っ込む所はそこじゃないでしょう。気持ちは嬉しいけれど、今ならまだ店に返品できるはずだ。
百香里は何とか総司に気づいて欲しくて視線でアピール。でも背が低いからか全然気づいてもらえない。
基本渉のする事に文句は言わない人だから気づいてもらえても望みはかなり薄いけれど。

「そんじゃ俺設置してくる」
「おう。頼むわ」
「待て渉」

百香里にとっての唯一の希望真守が渉を引き止める。

「なに」
「説明書をちゃんと読むんだぞ。お前は何時も」
「分かってる分かってる」

が、意味はなかった。百香里は諦めた。渉は大きな箱を持っていって設置する。
どんどん高価な設備がわが子の為に惜しみなく組み込まれていく我が家。
気遣いはとても嬉しい。いい叔父さんたちだと思う。けど、正直心臓に悪い。悪すぎる。

「だ、だめだ。このままじゃ駄目だ…」

司を2人に任せゆっくりとお風呂に入りながら必死に対策を練ろうとする百香里。
実家に帰っている間にこのマンションも改造が施され入るなりショッキングシーンの嵐だった。
女の子と分かって子ども部屋の壁紙は一面愛らしいピンク。固定のベッドは天蓋付き。
玩具も可愛いもので統一。絵本も増えて、クローゼットもあって。中は怖くてあけられなかった。
正直そこまでする必要があるのだろうか。もっと質素でもいいんじゃないか。今までどおりで。

「ユカリちゃん?どした?顔色悪いけど」

おくれて入ってきた総司はその光景にギョッとして固まる。ドアを開けるなり
湯船につかっていながらも俯いて膝を抱える百香里。聞き取れないが何かブツブツと言っている。
もしかして育児ノイローゼか?総司は心配して妻の傍に行き頭をなでてみる。

「やっぱり総司さんと私じゃ生きる世界が違うんです。おっきな壁があるんです。ふっかい溝があるんです」
「壁と溝て全然違うと思うんやけど。…やなかった、何言うてんの?そんなんあるわけないやろ」
「どうせ私は貧乏根性まるだしです。でも、あんなつぎつぎお金かけちゃって。心臓に悪すぎます」
「堪忍な。俺もあいつらもめっさテンションあがってもうて」

元気の無い百香里。その理由を聞いて納得したらしい総司は体を洗い湯船に浸かる。
落ち込んでいる百香里を膝に座らせて。

「だからって不自由な思いをさせたいわけじゃないんですよ?」
「分かってる」
「出来る限りの事をしてあげたいです。でも、私に出来る事はお金を使わずにいかにして遊ぶかとか。
節約とか。我慢の方法とか。そんなのが多いから。総司さんたちとはまた違ってしまって。その」
「次からは百香里ちゃんの意見を聞くようにする。勝手に買い物はせん」
「……」
「渉も真守もユカリちゃんのやり方を否定したりせん。他のやつにもさせへん。な?」

こつんとオデコを付き合わせ優しい声で語りかける。
百香里は最初は恥かしそうに申し訳なさそうにしていたが次第に表情をかえて。
総司の首に手を回し軽いキスをする。言葉はないがそれで了承したということだろう。

「ん…」
「ほんま可愛い」

満足そうに微笑みキスしながら百香里の体を優しくなでていく総司。
順番に頭、肩、腰、お尻。そして最後は胸へ伸びて。

「…あんっ」
「おお。出る出る」
「も、もう。駄目ですよ。お風呂が汚れちゃう」

ぐいっと胸を下から持ち上げ指先で乳首を押すとビュっと出てくる白い液。

「見た目は美味そうなんやけどなぁ」
「飲んだこと、あるんですね」
「あ。いや。聞いた話でな。聞いた話やで?あんまりうまなかったーて」
「実際に飲んだんでしょう?いいです別に。全然気にしませんから。全然。まったく」

前妻さんなのだから浮気でも何でもない。好奇心旺盛な人だからそういう事も冗談でしてそう。
百香里は平静を装っているつもりだが総司からしたらかなり怖い顔をしているらしい。
引きつった顔をして必死に宥めようとするがそれが余計に百香里をそう思わせてしまう。

「そんなんする時間なかったから。重圧もない楽な仕事やったのに。なんでか今よりも忙してな。
あんまり家におらん父親やったかもしれへん。大事にしてるつもりやったんやけど」
「もういいです」
「ユカリちゃん」
「そんな聞いちゃうとまた妬きそうだから。今は私と司の総司さんです」
「…うん」
「あ。もう。胸は駄目ですって。そんな揉んだらまた…あんっ…でちゃう」

全て納得したわけではないだろうがこれ以上はもう追求しないでおこうと決めた百香里。
彼女話をされるとやはり過去の話でも嫉妬しそんな自分に寂しい気持ちになる。気分をかえて
総司にくっついて甘える百香里。そんな彼女を抱きしめつつ胸を弄る。
乳の出がいいらしく少しの刺激で面白いくらい出てくる。恥かしそうにする百香里。

「あかん。癖になりそう」
「だ、だめですって。司にあげるぶんを…あんっ…だめ」
「母乳飛ばしながら拒むユカリちゃんもまた可愛い…」
「総司さん!もう!だめ!これ以上したら…えっち禁止!」
「あ。やめる。それはあかん。あかんで」
「もう。…こんなにして」

困った顔をする百香里の体は自身の母乳が滴っている。

「責任もって舐め取ります」
「いいです。美味しくないですから」

冷めた口調で言うと極力湯の中にこぼさないように立ち上がり椅子に座る。勿体無い気もするけれど、
これをあげるわけにはいかないのでシャワーで流してしまおう。
ついでに体を洗おうとボディソープを手にする。

「百香里」

総司もつられる様に風呂から上がりそんな彼女の後ろに座る。

「あの…総司さん?」
「なに?」
「わざと何か硬いものを私のお尻にくっ付けるのやめてください」
「何かってなーに?俺わからへん」
「…それは。その。…えっち」

妙に密着してくると思ったらやっぱり。百香里は顔を赤らめながらシャワーで流す。
その間も後ろから手が回ってきて肩やら腰をやらしく撫で始める。
彼曰く手伝ってくれているらしいがどうみても目的は別の所にあるだろう。

「ここもちゃんと洗っとこ」
「ちゃんと綺麗にしてますから。あぁ…そんな…しなく…て…も」
「そんな怒らんと仲良くしよ」
「んっ…はい」
「ほな見やすいようにもっと股開いてもらおか」
「あ。…もう……んぁっ」

総司にされるがままに仲良く過ごしいつもの長湯になってしまった。
真守や渉が傍に居てくれるから大丈夫だとは思うけれど。ちょっと長すぎたかもしれない。
久しぶりだったからつい甘えてしまった。百香里は髪も適当に乾かして急いでリビングへ向かった。

「これでどうだ。だめか。…お前のセンスわかんねーよ」

司を抱っこして立っている渉。その手には子ども向けの玩具。
あやしてくれているのだろうとすぐに分かる。が。

「あの。渉さん?…これ」

数が尋常でない。ソファには山盛りの玩具。

「泣き出したからあやそうと思って。でもどうしたらいいか分かんないし、玩具部屋にあったろ。
あんだけありゃどれか1つはお気に入りがあるだろうと思って適当に持って来たんだけどさ。
こいつ全然気に入らなくて。今まだ何かないかって上の人が取りにいってる」
「そうなんですか。すみませんお手数を」
「あのさ。司って、あんたの母親がつけたんだろ」
「はい。総司さんがそうしたほうがいいって。…総司さんの名前を頂きました」

松前家はもう祖父母も両親も居ない。百香里の家も今残るのは母親のみ。
自分たちで名をつけても良かったし百香里の母もそうした方が良いと言ったのだが
総司が是非母につけてもらいたいと言って。百香里は夫の意思に異存はなかった。

「長男は総って字もらうらしいよ。この家。長女は知らないけど」
「らしいですね。総司さんから前に聞きました」
「あんなおっさんの名前もらったりして大丈夫かな。ま、ユカりんが居ればいいだろうけど」
「それに渉さんも真守さんも居ますから」

母は意外にも即決で名を決めた。前から考えていたのだろうかと思ってしまうくらい。
渉は誰に教わったのか上手に司を抱っこしながらも器用に玩具を持ってあやす。
だがどれも気に入らないようで彼女は見向きもしない。それでも根気良く探して。

「あ。見て。司これ気に入ったみたいだ」

運命の1つにめぐり合う。

「みたいですね。…なんですかそれ」
「何かわかんねー人形だ。殿さまか?」
「あの、疲れませんか。私かわりますよ」
「大丈夫。それよかそんな髪で来なくてもいいから、ちゃんと乾かしてきなよ」
「え。あ」
「お前もそう思うだろ。な。司」
「…乾かしてきます」

たぶん無意識だろう。何時になく素直に優しい笑みを向ける渉。
好みの玩具を手に入れて満足げに笑う司を抱っこしているからだろうか。
百香里もつられて笑ってしまいながら髪を乾かすために再び風呂場へと戻る。

「酷いわユカリちゃん俺を置いて」
「髪乾かすの手伝ってください」
「うん」
「だからってまた硬いのお尻に押し付けようなんて思わないでくださいね」
「あれ。何でわかった?」
「もう」


続く

2010/12/31