「……でけえ」

自分の通っている所も結構大きいはずなのに、ここは比べ物にならない。
見上げたままポカンとしていると警備のおじさんの視線を感じ急いで中へ。
別に悪い事をしているわけじゃないし、知り合いがここに居るのだし。
いざとなればナンとでも言いつくろえる。
まだ何もされてないのに今から言い訳なんて考えている自分に苦笑いした。

「そこの君」
「は、はいっ」

さっそく目に付いた建物に入ってみたら行き成り呼び止められ。
ビクっと大げさに体が反応する。やはりここの学生じゃないからバレたかな。
怒られる?逃げたら余計怪しまれるだろうか。冷や汗をかきながら恐る恐る振り返る
そこには見るからに高そうなブランドでコーディネートされた男。学生ではない。
年は叔父さんくらいだろうか。こちらはキリっとしててあまり冗談が通じなさそう。

「見かけない顔だな、新入生かな?」
「え。あ。は、はい、まあ、そんな感じで」
「其方は駐車場しかない、講堂など学生に開かれた場所があるのは向こうのF棟だ」
「そ、そうなんですか。すいません」

思ったよりいい人?講師のようだから場所を聞いたら教えてくれるかも。
でも何か喋ってボロが出るかもしれない。ぺこぺこ頭を下げてその場から逃げる。
目指しているのは講堂ではなくて叔父さんの部屋。だから
またあっちをウロウロこっちをウロウロ。
こうなるならもっと詳しく場所とか聞いておけばよかった。


「教授が慌てる時ってどんな時ですか」
「唐突な質問だね」
「理事長や学部長に信頼されてるのは分かりますけど、あそこまで言われて
何で平気な顔して即答でお断りできるのかさっぱり理解できません」

亜美がアテもなく学内をうろついている頃、
学部長の部屋から戻ってきた雅臣とその助手。暢気にコーヒーを淹れる上司に
助手は呆れているというかもう好きにしてというか。この人らしいというか。
とにかく、1度くらいこの人の慌てふためく姿が見たいものだ。

「ちゃんと考えた上で返事をしているよ。それが君からしたら多少早いだけで」
「それはどうもすいませんでした」
「あ。もしかして君を推薦すべきだった?」
「理事長の娘さんと僕ですか?釣り合いが取れませんよ」
「釣り合い」
「婿入りなんかしたら必然的に後継者争いにエントリーする事になるだろうし。
相手はどれも教授や名誉教授クラス。もう僕は胃潰瘍にでもなりますよ」

学部長を通してそれとなくこの教授を指名してきたということは、
理事も一目置いているのだろう。大学の後継者として、娘の婿として。
或いはその娘が彼を希望したとか。歳は彼より若かったと思う。20代後半。
皆して見る目がないと思うのは自分だけだろうか。怖くて口にはしないが。
助手は自分のコーヒーを淹れて席につく。

「はははは」
「あの、お誘いを受けたのは僕じゃなくて教授なんですけど」
「あ。そうだった。断わったし大丈夫だよ。うん、胃潰瘍にならなくて済むね」
「貴方の場合ストレスとは無縁な気がしますけどね」
「そんな事は無いよ。こう見えて結構溜まってるほうで」
「…へえ」

じゃあ僕はもう毎日のように火山噴火してますね、貴方のおかげで。
と言いたいのを堪えるストレス。

「あ。そうだ殿山君、ちょっとお使いを頼まれてくれるかな」
「はいなんでしょうか。命に関わること以外なら」
「大げさだね。私は講義があるからかわりに本を借りてきて欲しいんだ」
「構いませんけど、終わってから借りればいいんじゃないですか」
「終わったらすぐ来るようにと東城教授に呼ばれていて」
「ああ、あれですね。学部長になにを言われたか根掘り葉掘り」
「こう言っては何だけど、彼ちょっと面倒臭いよね」
「いっそ本人に言ったらどうですか?すっきりするかもしれないですよ」
「そうだね。あんまりにも煩いなら注意しよう」
「怖いもの無いんですかマジで…」
「え?あるよ?」

とぼけているのか。本気でボケているのか。未だに掴めない上司。
助手は借りたい本のかかれたメモを受け取り部屋を出て行く。
2、3冊かと思ったら軽く10冊はあって。
これはのんびりしていたら昼飯を食べそこねそうだと焦った。

「ただ単に面倒だっただけじゃないのかあの人」

図書館に到着しメモを頼りに本を積んでいく。ずしりと重たい本たち。
男の自分でも結構疲れてしまう量だ。いいように利用された気がしないでもない。
けれど、東城に呼ばれたのは事実だろう。酷く面倒そうな顔をしていた。

「わっ」
「あっ」

女性の声とともにぶつかる衝撃。思わず本を落としそうになるが堪えた。
その代わりぶつかった女の子は地面に倒れてしまったようで。

「あいたたた…」
「ごめんね。大丈夫?」

助けてあげたいが両手がふさがっている。声をかけるとその子は立ち上がる。
助手であってもすべての学生の顔を覚えているわけではないから
知らない顔でも不思議は無い。中々可愛い子だ。ちょっと好みかも。

「はい大丈夫です。すいません私も余所見してたんで」
「何か探しもの?」
「そうなんですけど。あんまりにも広くて挫折しかけてまして」
「そうだね。ここは慣れるまで時間がかかるから。よかったら僕も手伝うよ」
「じゃあ、教えてもらえますか?お、…大野教授さんの居るところ」
「え。君が探してるのは教授?」

本じゃなくて?

「そ、そうです。…知りません?」

こっそり行って驚かす作戦とかこっそり行ってこっそり見て帰る作戦とか。
色々考えながらここに来たけれど、想像以上に大きな建物広い廊下に苦戦。
人も多いし。講義が始まるらしく忙しない中誰に聞いていいやらで。
やはり事前に叔父さんに連絡をしてから来たらよかった。基本的な事なのに、
それが浮かばなくて気分のままきてしまった自分が情けない。

「教授は今講義中で部屋に居ない。申し訳ないけど部外者を
入れるわけにはいかないから。終わってから出直してくれる?」
「部外者じゃ…あ、いや、まあ、…そうですか。分かりました」
「ごめんね。決まりだから」
「はい」

姪ですと言えばいれてくれたろうか。でも、変に思われるかも。
結果引き下がる事にした亜美。青年に礼をしてその場から去る。
場所だけでも教えてくれたらよかったのに。
居ないからって勝手には入らないのに。そこまで信頼がないか。
初対面だから仕方ないけど、でも、あの人をどこかで見た気がする。
まだまだ時間はある。どうやって潰そうか。
もう帰りたい気持ちになりながらもつい意地を張ってしまってさ迷う。


「ずっとそこで待ってらしたんですか?」

講義を終えて部屋から出ようとしたらすぐ呼び止められる。
学生の声じゃない。これは、あの人の声だ。面倒な人。

「ええ、貴方の場合よく頭痛だの腹痛だのと仰せられて
話しになりませんから。こうしてお迎えにあがりましたよ」
「実は今もちょっと頭痛が」
「なにか」
「いえ。それでお話しというのは」
「ここでは何ですし、テラスにでも出ましょう」

この人がピリピリしているのはいつもの事。それとも他に何か理由でもあるのか。
なんて考えるのも面倒だ。東城についていく形で外のカフェにあるテラスへ。
ここのコーヒーは好みでないので飲まない。相手も気にしてか飲まず。

「それにしてもいい天気ですね、昼寝したいくらいだ」
「大野教授。ここは腹を割って話をしましょう。今朝、学部長室に呼ばれたようでしたが
もしや他の大学に移るなどという話が来ているのでは?或いは海外の研究機関など」
「確かに呼ばれましたがそんな話じゃありませんよ。私が何時までも独り身なのを
気にしてくださって縁談を持ってきていただいただけですから」

雅臣の返事に素直に嬉しそうな顔をする東城。本人は隠しているつもりでも
自分よりも先にスカウトされてしまうなんて嫌だ、というのがよくわかる。
そんなにここが嫌なら自分で売り込んでいけばいいのにと思うのだが。
そうなるとまた話が長くなりそうなので黙って視線を他所に向ける。
本当にいい天気。聞こえてくる鳥のさえずり、風の音、学生たちの笑い声。

「あれは…亜美…」
「はい?」

チラっと見えた後ろ姿。髪の長さといい体のラインといい服装といい。
まるっきり彼女そっくり。この世にはそっくりさんが3人は居るというが。

「亜美」
「鶫…ですか?鶫はこの季節この辺には居ないはずですが」

否。あれはそっくりさんというレベルではない。

「すみませんがこれで失礼します」
「待ってください教授。ちゃんとお話を」
「後は助手にお願いします、それでは」

ポカンとしている東城を他所に急いで立ち上がり亜美らしき女性が去ったほうへ
勢いよく駆け出す。学内で走ることなんて今まで無かった。だから雅臣を知る
学生たちはちょっと驚いた様子ですれ違う教授を目で追っていた。

「さっきの人まだ図書館居るかな…」

沢山本を抱えていて学生にしてはちょっと年上に見えるけど
割と好みな容姿。でもってやっと思い出した。幸運にも彼は叔父さんの助手だ。
彼に聞けばいい。再び図書館に向かって歩き出す亜美。ちょっと足が痛い。

「誰かと待ち合わせかい」
「そういうんじゃないですけど。……って」

声をかけられてつい普通に返事したけど、これって。まさか。
振り返るとちょっと息苦しそうな叔父さん。

「君が来るなんて聞いていないし、承諾した覚えもない」
「そんないきなり怒らないでくださいよ」
「学校はどうしたの」
「朝の講義がお休みになったので、それで」
「だとしても、どうして私に連絡してくれないんだ簡単な事だろう?」
「そんなに怒るなんて思わなかったんです。もう帰るからいいでしょ?
ども!すいませんでした!ケチ!」

両手広げて待ってるとは思ってない。けど、いきなり怒る事もないはず。
連絡しなかったのは悪いけどこっちだって足が痛くなるくらい歩き回った。
罰は受けてる。叔父さんに会うというのは達成した。後はさっさと帰るだけ。
入ってきた門のある方向へ向きをかえて早足で向かう。

「もし私が君を見つけなかったら会えなかったかもしれないんだ。
後で君が来ていたと聞いても嬉しくもなんともない。…そうだろう?」
「こんな所で抱きついて大丈夫ですか?」

亜美の手を掴み引き寄せ逃がさないように抱きしめる。
何の囲いもない通路。誰かに見られたら大問題だ。
誰も居ないかチラチラと確認しながらもちょっと嬉しい。

「恋人を抱きしめてはいけない法律はないよ」
「貴方の場合抱きしめるだけじゃ足りないでしょ」
「そうだね」
「即答すんな」

何とか叔父さんをひっぺがし1歩下がった。

「昼はまだだよね、一緒に食べよう」
「…いいですけど。でも、怒ってるんじゃ」
「こうして会えたからね。それに、聞きたいこともある」
「はあ」
「学食はあまりお薦めできない。何処か外で食べよう」
「……例えば?」

でも手はさりげなく繋いでみたり。視線を向けて見詰め合ってみたり。
伺うように上目遣いに尋ねたら叔父さんは暫し黙って。考えて。
顔を亜美の耳元に近づけ何かを囁く。すぐに赤らむ彼女の頬。

「先に車に乗っていてくれるかい。場所は」
「分かってます」
「そう。じゃあ、すぐ行くから」
「はい」

亜美は駐車場へ雅臣は部屋へ各々一端わかれる。
こっそり行って叔父さんを驚かせるという作戦は失敗したけど、
無事に会えて一緒に食事が出来るなら来た甲斐があった。かな。
駐車場に到着し預かった鍵で叔父さんの車に乗り込む。

「さあ行こうか」

数分後、足早に来た叔父さん。

「助手さん何か言ってませんでした?」
「別に」
「そうですか」
「彼と何を話したの」
「別に」
「…そう」

大学を出て街を少し出て向かったのはホテル。何時もこっそり利用するような
ラブホではなくて一般的な。それもちょっと高価そうな作りの。何故そこにしたのか
亜美には分からないけれど。そこの最上階にあるレストランに入る。メニューは
高そうなものばかりだが会計は叔父さんなので気兼ねなく肉料理をオーダー。

「ここで夜景とか見ながらお酒飲めたらさいこーだろうな」
「君が成人したらね」
「……」
「どうしたの」
「いえ、その時にはドレス買わないと駄目ですね」
「え?そこまで着飾ることはないと思うけど。脱がせるのも面倒そうだし」
「ほんと夢がないおっさんだ」
「昼間から夢ばかり語っているおっさんなら魅力的で満足かい?」
「その上屁理屈ときた」

冷めた視線を送りながらも運ばれてくる料理をせっせと食べる。
歩き回って足も痛いけどそれ以上に空腹で死にそうだった。
あまりにもガツガツ容赦なく食べる亜美に叔父さんは唖然としていたけれど、
そんなの気にしない。デザートまでしっかりと頂いて満足。大満足。

「そのまま寝てしまいそうな勢いだね」
「午後の講義あるんで寝るわけにはいかないんですけどね。…ちょっと眠い」
「私が部屋をとった理由は分かってる?」

レストランを出ても大学には戻らない。叔父さんの手には部屋の鍵。
エレベーターは1階へは行かず途中で止まって。部屋に向かって歩く。
午後の講義は3時からだしまだ時間に余裕はある。
けど、あんまり激しいのをされると気が付いたら夜とかありそうで怖い。

「お昼寝するベッドまで用意してもらってどうもすいませんね」

部屋に入ると寝心地が良さそうな広くてフカフカなベッド。
食後の眠気。心地よい温度設定。
ただ寝るだけにしてもこれじゃぐっすり寝てしまう。

「その前に風呂にしない?」
「いいですけど。…何か企んでます?」

腕を掴んで何時になく積極的に風呂を勧める叔父さん。
何時もはのんびりマイペースでもエロスになると積極的だから
そういう事、なのだろうか。にしても怪しい気がする。長年のカン。
怪しみながらも一緒に風呂場に向かい服を脱いでドアを開ける。

「どうしたの」
「いや、あの、風呂に花が浮いてるんですけど」

ふんわり香る花の香り。アロマ?と一瞬思ったが湯船には既にいっぱいのお湯。
でもって綺麗な花が入っている。たまにテレビで見るような鮮やかなもの。
呆然と眺めていたらどうしたの?と叔父さんが後ろから顔を出す。

「へえ」
「え。知らないで来たんですか?」
「知っていたらここは選ばなかったよ」
「何で?」

そういう演出なのかと思ったのに。本気で知らなかったような顔。

「君と話をするのに向かないからね」
「……どういうお話でしょうか」
「どういうお話しだと思う?」

顔は笑ってるけど目の奥が笑ってない。そんな時は大抵めんどくさいお話だ。
裸のままで突っ立っているのは寒いよと奥へ促される。
大きな風呂に浮かぶ花の乙女チックな見た目と香りに反して亜美は冷や汗。
そのまま大して会話も出来ないで椅子に座って軽く体と髪を洗って。

「あ、あのぅ。そんな引っ張るほど怒らなくても」
「そうかな」
「そうですよー。おじさんみたいな大人はもっとすっきりした方がいいと思う」
「すまないね。私はどうにもすっきりしない性質らしい」

湯船に浸かる彼の膝に座り、というか座らされて半ば強制的に向かい合う。
まさかここに来てお説教タイムとは。根に持つタイプだとは思っていたけれど。
これは幾らなんでも持ち過ぎじゃないだろうか。
亜美の視線に対しまた笑ってない笑み。そんな悪いことはしてないのに。

「…で、何がお望みですか」
「私がすっきりしない部分を君に処理してもらいたい。原因は亜美だからね」
「エロい事しろって?」
「それは後でいいよ。今求めているのは大学での行動。
私の知らない所で亜美が何をしていたのかということ」

朝、それぞれの道を進んだ後の行動全部。

「め、めんどくさ!」
「じゃないと君を離さないよ。連泊してでも」
「…本気ですか」
「私がそんな冗談を言うと思うかい」
「言ってる事がまず冗談みたいですけど。…連泊は困るので、…言います」
「どうぞ」

こうなったらもう何を言ってもこの人には通じない。
観念した亜美は肩の力を抜いて。

「大学に行ったら掲示板に休講のお知らせがあって。あとは昼からしかないし、
友達は講義中だしで暇で。それで。ちょーっとばかしおじさんの様子を」
「私に会いに来ただけ?」
「まあ、そんな感じで」
「はぐらかすんじゃない」

明らかに何かを疑ってる目で亜美を見つめている。
何もなければ平然と跳ね返し見つめ返せるけど、今ちょっと出来ない。
その後ろめたさがまた彼を怒らせてるんだろうなと分かってるけど。

「そんな…取り調べですかこれは」
「そうだよ。私は今君を調べてる」
「彼女が信じられない?」
「悪いけどそういう安易な言葉に乗せられるほど若くはないんでね」
「こ、この偏屈おやじー!」

その場しのぎの言葉で納得してくれる人じゃないのも分かってるけど。

「それで。君の狙いは何?さっさと言ってしまったらどうだい」
「あのぅ…怒らない?」
「君次第としか言えない。怒られる可能性を感じるようなら危ないかな?」
「もぉおお」

この野郎。
殴ってやりたい衝動に駆られるがこれ以上話をこじらせるのもよくない。
亜美は軽く息を吐いて。叔父さんをちゃんと見つめ返した。逃げても無駄。
というか、さりげなく腰を抱きしめられていて動くことすら出来ない。

「言う気になったかい」
「…講義が休みなので、買い物とかしようと思ったんですけどお金勿体無いし。
家に帰ってもお母さんの邪魔しそうだから。その、…ちょっと興味本位で、その」
「……」
「おじさんの職場を見学するついでにおじさんの助手さんとか、
昔屋敷に来たカッコイイ学生さんとか見えたらなーって。ちょっと思って」

今自分がどれだけ危なっかしいことを言っているか自覚している。
けど、取り繕った嘘をついたって見破られてしまうからこうするしかない。
さすがに姪っ子を殴るとかは無いと思う。けど、ハラハラしながら様子を伺う。

「私が気が付かなければそんな男と会うつもりだった?」
「何がしたいって訳じゃ。ただなんとなく」
「亜美、君は、……若いな」

手元に閉じ込めては置けない自由なもの。異性にも積極的に興味を持つ。
若者というのは大体そうだ。常に新しい刺激を求める。無茶もする。
それに追いつくつもりも合わせるつもりもまったくなかったけれど。
でも、亜美の若さを感じるとやはり落ち込みは隠せない。

「助手さんとちょっと話したけど。でも雅臣さんの方がずっとカッコイイ」
「そうかい」
「そりゃ、ちょっとはかっこいい人も興味あったり見たかったけど、
それよりも仕事してる雅臣さんを見たくて。聴講できないかなーって思って。
それで来たんです。これは嘘じゃないから。本当だから。お願い信じて」

短大で講師としてくる叔父さんもいいけど、本元で講義する彼も一度は見たい。
カッコイイ人たちには会えたらいいな、くらいの気持ちで。

「聴講は歓迎するよ。ただし、連絡はして欲しい」
「はい」
「報告は以上かな?」
「んー。あと。何か嫌味そーな先生に会った」
「嫌味そう」
「悪い人じゃなさそうなんだけど。何か雰囲気が嫌味っぽい」
「…ぁあー」
「ま。いいや。ね、すっきりした?」

擦り寄ってオデコを合わせる。もう隠す事はないから見詰め合える。

「そうだね。ただ、君が魅力的過ぎて別の場所がすっきりしない」
「3時には終わりそうですか?」
「努力する」
「けど、我慢はしない?」
「また1つ賢くなったね」

笑う叔父さんには怒っている気配も疑っている様子もない。
どうやらそこはすっきりしてくれたらしい。でもまだ残る場所。
亜美も笑みを作りながら彼の首に手を回しキスする。
我慢できなくて最初から舌を絡め吸い付くような深いものを。

「…いい香り」
「そうだね」
「ここでシテいい?」
「そんな目で見つめられたら我慢できないな」

花の甘い香りに包まれてお風呂でえっち。
自分にはちょっとロマンチックすぎるかも。でも、たまにはいいよね。
体を逸らし首筋から胸元へ雅臣の唇が移動する。手は腰とお尻。

「…ぁ…ん…」
「甘い香りがする」
「…あっ」

胸に吸い付きながらも腰にあった手がソコへ伸び奥へと侵入する。そして、
まだ隠れていた淫核を見つけ親指で優しくなでると亜美の腰が震えて。
甘い声と共にもっと触ってと言わんばかりにその存在を主張した。
もっと奥へと指を忍ばせると既にソコはお湯よりも熱い締め付け。
様子を見ながら刺激する度に亜美は辛そうな顔で股を閉じようとする。

「閉じないで亜美」
「…だ、だって…もう…いっちゃいそうで」
「後で好きなだけ一緒にいこう」
「で、でも…あ…あん」
「君のイク顔がたまらなく好きだよ」
「ぁん…もう…変た…い…ぃ」

そう言いながらも雅臣のお願い通りそっと閉じていた股を開く亜美。
結局その後すぐに大き目の声を上げて果てる。クタっとした亜美を抱き上げ
風呂場を出るとバスタオルを1枚とってベッドへ。

「濡れた君もいいね」
「つかエロければ何でも好きでしょ」
「認めたら君、怒るよね」
「ええ。顔面に拳をめり込ませて前歯へし折ってやりますよこのクソ野郎」
「言う事は辛らつなのに体は甘い香りか。…亜美ぽくていいね」
「どういう意味ですか」

組み敷いた亜美のオデコや鼻の先、ほっぺに唇とキスしていき。
さっき散々すいついたはずの豊満な胸にも夢中で吸い付いて赤い後を残す。
ポツポツといくつも。自分のモノの証のように。亜美は嫌がるけれど。

「君が好きって意味だよ」
「…こんなポーズにさせといて言う言葉か」

太ももを掴み股を思いっきり開かせる。雅臣の前にさらされるピンクの
普段は隠された恥かしい場所全部。何度されても慣れる事が出来ず
亜美の顔は真っ赤。視線を合わすことも出来ない。

「ではどんなポーズならいいかな。その手の事には疎くてね。教えてくれる?」
「……あの人よりよっぽど嫌味っぽい」
「あの人。誰かな?まだ男と会ったのかい?」
「こーいう時だけちゃんと聞いてるし。僻みっぽい。嫉妬深い。面倒臭い」
「聞こえてるよ」

そういうと、先ほどまでの愛撫でぷっくりと存在を主張する淫核を摘む。

「あ。…そ、そこ引っ張らないで…あっあっ…い、いや…なの…っ」
「何が嫌?」
「ふ…2人で…一緒に…イクの…っ」

弱い部分なのに集中的に優しく摘まれたりコリコリと撫でられたりして、
亜美はいきなり果てそう。でも必死にイクまいと我慢。顔は苦しそうで
腰を必死にくねらせる。それがまたいやらしいのだが本人は気づいてない。

「これでいい?」
「ぁはぁ…あ…うん」

やっと手が離れたかと思ったら雅臣の体が真上に来て。
既に硬くなっていたソレがゆっくりと中へ入る。
その刺激でまた果てそうになるがグッと堪え雅臣に抱きついた。

「…君の口から他の男の話しをされると私は冷静でいられない」
「雅臣さん」
「いけない駄目な大人だという自覚はあるよ」

でも、それでも、止められない。

「そんなのずっと昔から分かってますから。それでもいいからこうして
今も付き合ってるんでしょ?これからも付き合っていくんでしょ?」
「そうだね」
「…貴方からの……、待って…るんだから」
「え?」
「食べた分消費しなきゃ!ほら!おじさんもっと動いて!」
「いや、君3人前は軽く食べていたからとてもセックスの運動量では無」
「ほら!」
「痛いよ骨が折れる」

照れ隠しなのか本気で食べた分を消費しようとしているのか。
ベッドの上で暴れる亜美とそれに巻き込まれながらもちょっと楽しそうな雅臣。
最初は雑だった動きもだんだんと彼のペースになり。ぶつかる音が規則正しく、
時に激しく。喘ぎ声も艶っぽくなって。2人で果てる声が何度も部屋に響いて。

「も、もう2時30過ぎてる…行かないと」
「いいのかい。せっかく君の好きなバックなのに」
「べ、別に好きってわけじゃ…う…ん…ぅっ」
「私は偏屈で僻みっぽくてとても嫉妬深い面倒臭い男だからね。君に意地悪をして
ジワジワと攻めるとしよう。亜美のお尻は魅力的だから見ていて飽きない」
「こ、こ、の、クソ野郎ぉ…ド変態!スケコマシ!ロリコン!ええい!あほー!」
「そうは言ってもギュッと私に喰らいついてくる君は本当に可愛いね」
「だ…だ、だれかこのおっさんをどうにかして」

結局3時を少し越えてしまって、完全なズル休みにはならなかったが遅刻した。
今度から安易な気持ちで叔父さんの所に行ってはいけない。男目当てなんて
臭わせるだけでも酷い目にあう。また1つ賢くなった。



「昨日は残念な半日でしたよ」
「どうして?」
「話の途中で鳥を追いかけていき成り去って行ったとかなんとかで、学長越しに
東城教授から苦情が来てましたよ。何でか助手の僕が全部受け止めましたけどね」
「あそう。ごめんね。急いでいたものだから」
「それはもう日常の事なので諦めてますけど。それよりも残念なのは激レアな
慌てた教授が見られなかったことですよ!ああもう何で見逃すかなあ〜」
「慌てた私なんて見て何が楽しいんだい?それよりこれ返して来てくれる?」
「はい。…何時か必ず見てやる」

おわり


2010/10/26                                        リクエストありがとうございました!いかがでしょうかっ(汗