作戦!


「……」
「どうしたの真面目な顔しちゃって」
「…彼氏がさ」
「なに浮気した?」
「いや。してない。してないけど。どうだろう。妖しい所あるんだよね…。
一応、少しでもしたらハラワタ引きずり出してケツに熱い棒突っ込んで
ぶっ殺すって毎晩耳元で囁いてるんだけど」
「あんたマジで怖いわ」

ドン引きしている友人を他所に亜美は弁当を食べる。
就職活動真っ最中でもしかしから疲れているのかもしれない。
そう判断したようで食べなよとお菓子を丸々1つくれた。
用事が出来たと彼女はご飯も早々と終えて友人と別れる。

「……ふぅん。めんどくさい。マジめんどくさい」

誰も居ない教室の隅でこっそりと本を広げる亜美。
それを睨みながら深いため息をした。
あと携帯を見る。メールが1件。

『午後の講義が終わったら一緒に帰ろう』

「はい」とだけメールを返す。そして溜息。

「講義にあまり集中していなかったようだけど。気分でも悪い?」
「先生の話が長くって」
「それは悪かった。言葉以外に君に伝える方法があればいいのにね」
「嫌味」

午後の最後の講義を終えてさりげなく講堂に残っていた亜美。
向こうも平静を装いつつ部屋に残っており合流する。

「そうすれば私の気持ちを分かってもらえるかな」
「……ねえ、雅臣さん」
「ん?」
「車乗る前にどっか個室でお話しません?」
「…いい、けど。どうせ家に帰るのだから話なら車でも」
「今したいの」
「わかったよ。では、いこうか」

だが亜美に手を引かれ誰も居ない部屋に入るなり鍵をかけた。

「……」
「珍しいね。学校で君から私を誘うなんて」

そして彼に抱き付く。

「…誘うって言うか。まあ、そうなのかな」
「何か考えがあるようだけど。聞いてもいい?」
「あのー」
「何かな」
「非常に申しあげにくいのでございますがー」
「そんなに言いづらい事?何だろう」

照れているような恥ずかしそうな困ったような。
とにかく複雑な表情をして雅臣を見上げる亜美。
内容が気になるけれど無理には聞かず待つ。

「……やっぱいいや」
「亜美。ここで止めるのはよくないよ。ちゃんと話をしてくれないと」
「分かってる。おじさんの性格はよく分かってる。けど。やっぱり」
「進路の事?なら私もいくつかツテを頼ってみるから」
「そういうんじゃ」
「何も恥ずかしい事じゃないよ」
「違うってば。…私たちの事、だから」

私たちの事。気になるキーワードだ。
少しだけ雅臣の表情が険しくなる。

「何だろう。出来れば楽しい話であるといいのだけど」
「楽しいと思うよ?おじさんは」
「どういうこと?」
「……耳かして」
「うん」

言われるままに亜美に顔を近づける。
心なしかさっきよりも顔が赤くなっている気がする。
けれど内容が早く知りたくて大人しく聞くことにする。
彼女はまだ少し悩んでいたようだが決心して彼の耳へ近づき。

「……ど、どうですか」
「……」
「難しい?」

その言葉を伝えるとささっと2,3歩後ろへ下がる。

「君は正気か?」

珍しく口をぽかんと開けた間抜けな顔の雅臣。
それくらい驚いたということか。

「だからやっぱやめようって思ったんじゃない」
「そうだね。止めた方がいい。私は賛成しかねる」
「……嫌ですよね。ンなところ」
「場所が嫌なのではなくて。危ないからしない」
「……」
「君の体は何処であろうと可愛いよ。…でも、リスクはおかせない」
「はい」
「でも。どうして?まさか普通のセックスでは刺激がなくなったと」
「…そういう訳じゃなくてただその…練習を」
「練習?…君。お尻で何をする予定?」
「お尻っていうかなんていうか」

お尻に意味があるんじゃなくて貴方に頼んだことが意味あるんです。
とは、流石に恥ずかしくて言えなくて俯いた。

「出来るだけ君を理解したいとは思うのだけど。すまない」
「…いいんです」
「私に飽きてきたのならはっきり言ってほしい。改善できるのなら何でもする」
「そ、そんな思いつめた顔で言わないで。違うから。…雅臣さん大好き」
「…亜美」
「ほんと。…ほんとだから。ね。そんな顔したら嫌」

年齢差とか叔父さんだとか重たい障害がある恋だけど。
飽きたりしない。嫌だなんて思ってない。むしろ愛しい。
だからこその考えだったのだが、
やはり真意を言わないとただそういう趣味と思われるか。

「ありがとう。では、帰ろうか」
「はい」

おでこにキスをされてから部屋を出る。
計画は上手くはいかなかったがそれはそれでもういいかと諦めることにする。
思いのほかすんなりと終わってしまったから悩んでいたのが馬鹿みたい。
車に乗って途中で適当に夕飯の買い物をして。家に帰る。
最近は就活が忙しいとかストレスが溜まってるんですとか言い訳をして
カレーを作る事が多い。彼もそれをくんでか文句を言う事はなかったけれど。
今日はなんとなく相手に気を使いチャーハンにしたら驚かれた。


「…ね。亜美。…本当に、私に飽きてない?」
「ない」
「…行き成りは、いけないよ?前兆が出て来たらすぐ言うんだよ?」

先に風呂に入っていた叔父さんの後を追いかけて一緒に風呂に入ろうと亜美も入る。
体を洗って頭も洗ってから湯船につかると後ろからぎゅっと抱きしめられた。
まだ気にしているようで寂しそうな声で言う。亜美が気にしているよりも彼の方が
ずっともっと重たく考えているのだろうとなんとなく察することは出来る。
だからこそ早く亜美はこの不自由な鎖を壊してしまいたい。

「…それより」
「何かな。君顔怖いよ?」
「この前の火曜日。どっか遠くへお出かけしてたみたいだけど。どうでした?
ミニスカートのボインちゃんが隣に座ってたんですものね。嬉しかったですよね」
「確かに学長に頼まれて助手を連れて講演会へ行ったよ。でも、何で彼女の服装まで知って」
「私就活のイベントで街出てたんですよ。疲れてカフェ入ってぼんやりしてたら見たことある
車がとまってるじゃないですか。声かけようかと思って店出たら何か見覚えある
若い女の子が助手席乗るじゃないですか。嬉しそうにニコニコしながら」
「あれは持っていく花を買ってもらって」
「貴方こそこんなめんどくさい姪っ子なんかやめて純粋に好きって言ってくれる
若くってボインで従順そうな子のがいいなーとか鼻の下のばしてるんじゃないですか」

こっちはなれないスーツ着こんでイベント会場で愛想笑いしてみたり
長ったらしい話を延々と聞いたり疲れ切っていたのに。
仕事なのは分かっている。怒る事じゃない事も。
でも思い出してくると腹が立ってきた。八つ当たり上等。

「…ああ。そうか。それで誤解をして君は私に嫌気がさしてきたんだね?」
「そういうわけじゃ」
「彼女はいわゆるいい所のお嬢さんと言うやつでね学長のお気に入りなんだよ。
何かと彼女を連れていけと言われていて。面倒だから一度だけ連れていくことにしたんだ。
ちゃんと君に説明をしておけばよかったね。ごめん」
「…それなら。まあ」

亜美だって本音は彼を信じている。
だから真面目に謝罪されてもうそれ以上の怒りはなくて。
逆になんだか悪い事をした気がしてきて。視線をそらす。

「間違ってもあの子に君以上の魅力があるなんて思ってないから。
顔も胸も性格も何もかも私は亜美に夢中だからね」
「は……恥ずかしいからもうやめて」
「可愛いね」
「出ましょ」

体が内側から猛烈に熱くなってもう耐えられなくなって外に出る。
あのまま一緒に居たらきっとのぼせて倒れてた。
すぐに水分を補給して心を落ち着かせてから彼の部屋へ向かった。

「待ってたよ」

ノックしてドアを開けるとベッドに座っている叔父さんが見えた。
確かにそのつもりだったけど。待ち構えられると逃げたくなる。
一旦ドア閉めたがまた再び開けてゆっくりと彼の隣へ座った。

「…あ。…いや。…行き成りはいや」

何時ものようにキスされながら服を脱がされていたのだが
行き成り足をつかみ上に上げる。M字で大股開きの恰好は
たとえ辛うじてパンツをはいていても恥ずかしい。
何よりまだキスだけでそこまでは濡れてないのに。

「…脱がせるよ」
「い、嫌ですって!ちゃんと優しくしてくれないと…」
「私が君を傷つけるわけないだろ?見るだけだよ」
「…えぇ?」

何事かまだ理解できていない亜美を他所にあっさりとパンツを脱がせて。
全裸になった亜美。まだ何をされるのか分からず怯えた様子で
自分の股ごしに彼を見つめている。
ソコをまじまじと見られているという羞恥心は今は不安の方が強い。

「ちょっと…触ってみてもいい?」
「ど、どこ?」
「君が私に出して欲しいと言った場所」
「だめ!」
「どうして?触るだけなら傷はつかないよ」
「やっぱ駄目!やだ!触らないで見ないで!」

彼のしようとしていることをうっすらと察して亜美はじたばた足を動かす。
手は両手でソコを隠して。何とか彼の手から逃れる事ができた。と。
思ったらあっさりと彼が上に来られて逃げられないように抑え込まれた。

「じゃあ、後にしよう。今はまず…この胸」
「あっ」

顔が下へ降りて胸の先を食み音がするくらい思いっきり吸われる。
指でも弄られて引っ張られて乱暴に握られてひどい扱いを受けるけれど
亜美にはもうそれは快楽でしかなくて蕩けそうな甘い顔になって喘ぐ。

「…もっと違う刺激を考えないといけないね」
「え?」
「最初よりも君の顔が蕩けてない。慣れてきたみたいだ。どういう刺激が好きかな。
ふふ。亜美は若いから。いろいろと研究し甲斐があるね」
「…変態」
「胸は後でまたじっくり調べるとして」

手をゆっくりとソコへとすすめ陰毛を分けいりやわらかな肉壁を撫でる。
既に湿り気が十分にあり亜美は切なそうな顔をして雅臣に抱き付いた。

「…ん。あ。…ふ」
「胸の刺激だけでこちらは結構蕩けてるね。…よかった」
「……」
「我慢しなくていいから。声を出して」
「ん…あぁっうっ…あぁああぁあ」

何時も通りに執拗なくらい丹念に愛撫されてイカされて亜美は汗ばむ。
彼が一旦ベッドを離れる間、亜美は息を整え寝転んでいた。
自分の股からいやらしいものが滴っているのは分かっている。何時もそう。
心臓がどきどきして頭がどうにかなりそうなのはえっちのせいだけじゃない。

「ごめんね亜美。さ。続きを」

しよう、と雅臣が言おうとしたら何故かベッドに寝ている亜美が
自分で股を開きソコを自分の手で押し広げているという謎の光景。

「こ…ここに……ここに…貴方の熱いのぶち込んで!!」

一時の間。

「……えーっと。そう。うん。刺激的な誘い文句だね」
「死にたくなるくらいの勇気だしたんだから!」
「わかるよ。…私なら死を選ぶ」
「だ、だから!ちょうだい!」
「つまり君は…出して欲しいんだね?」
「……うん」

そしてまた沈黙が続く。その間も亜美はその卑猥なポーズのまま。

「…私が君の事をどれだけ真剣に考えているかわかるかい?
君の将来を壊さないようにどれだけ気を使っているか」
「……」
「…分からない子にはお仕置きだ」
「あ」

そのヌメり光るそこへ硬いものがズブっと入る。
付けてない、と思う。どうしよう本当に生でしてる。
本当はまずお尻でどんなものか確かめてからしようと思っていた。
けど、準備が面倒とかやはりお尻は恥ずかしいとかあってやめて。
でもまさかの本番の生。

「どうだい亜美これでいいかい?」
「…あ。…うん。…い…いいです…あ。…ぐっ…」

夫婦がする本番。これで上手くいけば妊娠する。どうしよう。妊娠する。
亜美はその言葉に妙な興奮を覚えてさらに表情をとろけさせる。
打ち付けられるたびに擦れるたびにこれが生なんだとちょっとにやけた。

「……そろそろ…出すよ」
「は。はい!」
「…いいんだね?」
「はい!お願いします!」

よっしゃこい!亜美は心の中で身構えて。

「くっ」

彼の果てる声とともに

「え?……ぎゃ…ぎゃああああああああああああああああああ!」

何か白いのが顔に向かって飛んできた。

「…これで、いい?」
「…い、……い、…いいわけ…ねえだろうが!ボケが!糞が!ふざけんな!」

お腹から胸顔にドビューン。熱いヌメヌメが。
確かに欲しかったけど。でも、外じゃない。中だ。
亜美は起き上がり彼の腹に1発ぶち込む。

「出して欲しいって。君、お尻の件といい変態趣味に傾倒しているようだったから」
「そうじゃないでしょ?…何でこんなことになってんの意味わからん!もういい!
風呂入りなおしてくる!最低!」
「待って亜美」
「なに!」
「…うん。…ありがとう」
「次体に飛ばしたら殺す」
「……はい」

ぷりぷり怒りながら全裸で部屋を出ていく亜美。
屋敷には自分たちしかいないからいいけれど、なかなか大胆だ。
この場合服につくから何も着れないというのが正しいのだが。


「…雅臣さんの馬鹿。せっかく計画上手くいくと思ったのに。
絶対分かっててわざと間違えたな。…妊娠しちゃえばお父さんだって。
でも、…そうなると私の将来、だもんな。だから、だよね。きっと」

シャワーを浴びながらハアと深いため息。
上手くいくと思ったがそう甘くはなかった。
ここまで来るのにどれほど迷ったか彼は知っているから。

「よし。次は薬物で眠らせて種だけもらおう作戦だ」
「亜美。何か怖い事をつぶやかなかった?」
「気のせいです」

今回は失敗したけれど自分たちが何時までも愛し合い
幸せでいられるための行動を亜美はこれからも
何かしらやるつもりだ。雅臣はそれが少し不安なようだが。

「犯罪はいけないよ?」
「貴方は私のモノですよね」
「…はい」
「じゃあ問題なーし」
「……」

亜美の勢いに負ける日は近いもよう。


おわり


2014/08/4